ETAS INCA V7.4 Getting Started

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ETAS INCA V7.4
入門ガイド
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INCA V7.4 | 入門ガイド R03 JP | 06.2023
目次
1 はじめに 6
1.1 製品の正しい使用法 6
1.2 対象ユーザー 6
1.3 安全に関する注意事項の書式 6
1.4 本製品使用時の安全に関する注意事項 7
1.5 個人情報保護に関する注意事項 8
2 INCA - 基本的な作業の流れ 9
2.1 操作面から見た製品の構成 10
2.1.1 基本ソフトウェアの機能 10
2.1.2 データベースマネージャ(DBM) 10
2.1.3 ハードウェアコンフィギュレーションエディタサブシステム(HWC エディタ) 11
2.1.4 実験環境(EE)サブシステム 11
2.1.5 測定データアナライザ(MDA)サブシステム 12
2.1.6 適合データマネージャ(CDM)サブシステム 12
2.1.7 ユーザーインターフェース作成ツール(VUI)サブシステム 12
2.1.8 ASAM-MCD-2MCエディタサブシステム 13
2.2 データベースマネージャ(DBM)での作業準備 14
2.2.1 新しいデータベースとフォルダ、およびデータベースアイテム(ワークスペース、実験)を作
成する 15
2.2.2 プロジェクトをセットアップする 16
2.2.3 バスディスクリプションやその他のデータベースアイテムを追加する 18
2.2.4 ワークスペースのセットアップ 19
2.2.5 インポート/エクスポート機能を使用してデータ交換を行う 20
2.2.6 複数のデータベースを使用する 21
2.2.7 データベースアイテムを操作する 23
2.3 ハードウェアコンフィギュレーション(HWC)エディタでの作業 24
2.3.1 ハードウェアを追加してパラメータ設定を行い、初期化する 25
2.3.2 PCとECUのデータバージョンを一致させる 26
2.4 実験環境での作業 27
2.4.1 測定変数と適合変数を選択する 27
2.4.2 実験で使用する変数とその表示ウィンドウを設定する 28
2.4.3 変数の詳細設定を行う 29
2.4.4 測定/適合ウィンドウを複数のレイヤに配置する 30
2.4.5 測定データ記録に関する設定を行う 31
2.4.6 測定/記録を行う 32
2.4.7 適合作業を行う 33
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2.4.8 データセットを保存する 34
2.5 適合データマネージャ(CDM)でのデータセットの管理 34
2.5.1 データセットと適合変数を選択する 35
2.5.2 リスト出力/比較/コピーを実行する 36
2.5.3 結果ファイルと出力ファイルを分析する 37
3 INCA - 基本的な操作方法 38
3.1 ウィンドウの構成 38
3.2 ツールバー 39
3.3 キーボードによる操作 39
3.4 マウスによる操作 40
3.5 階層ツリー 41
3.6 編集用テーブル 42
3.7 INCAのイベント用サウンド 43
3.8 データ用ディレクトリ 44
3.9 ヘルプ機能 45
3.9.1 INCAオンラインヘルプ 45
3.9.2 マニュアルとチュートリアル 46
3.9.3 ビデオチュートリアル 47
3.9.4 キーボードコマンド一覧 47
3.9.5 モニタウィンドウ 47
3.9.6 INCAの更新情報 47
3.9.7 トラブルシューティング 48
4 INCA - コンセプト 49
4.1 概要 49
4.1.1 システムの概要 49
4.1.2 オープンインターフェース 50
4.2 適合の概念 51
4.2.1 ASAM-MCD規格に基づく標準インターフェース 53
4.2.2 ECU と適合システム間のインターフェース - ASAM-MCD-1 54
4.2.3 ETK(パラレルECUインターフェース)を使用する適合 55
4.2.4 シリアルインターフェースを使用する適合 57
4.2.5 測定/適合ハードウェア 59
4.3 INCAの基礎 60
4.3.1 ワーキングページとリファレンスページを使用するデータ管理の概念 60
4.3.2 プロジェクトとマスタ/ワーキング/リファレンスデータセット 61
4.3.3 実験(Experiment) 62
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4.3.4 ワークスペース(Workspace) 62
4.3.5 データベースアイテム間の関係 63
5 お問い合わせ先 66
6 略語一覧 67
用語集 68
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1 はじめに | 6
1 はじめに
最先端の「インテリジェントな」自動車といえば、消費者の立場からは、安全で快適に運転でき、
低燃費で環境汚染物質の排出量が少ない自動車、というイメージが連想されるでしょうし、また
自動車メーカーの立場からいえば、アンチロックブレーキやトラクションコントロールシステム、順応
式AT ドライブプログラム、マップ制御による燃料噴射、といったさまざまな先進技術を搭載した自
動車を意味します。
そしてまた制御システムの開発者の方は、このような自動車を開発するために、複雑な制御アル
ゴリズムをプログラム化してマイクロコントローラベースのECU(電子制御ユニット)に実装した
後、量産に向けての時間と予算の制約の中で、さまざまな種類のエンジンや車両向けに適合
(プログラムの最適化)を行う必要があります。
ETAS の測定/適合ツール「INCA」(Integrated Calibration and Acquisition
Systems)は、包括的な信号測定機能を持ち、ECU のオンライン適合、測定データの分析、
適合結果の管理や文書化、といったさまざまな作業に必要な機能をすべて備えています。
INCA:
実車、テストベンチ、さらにオフィスやラボでも使用できます。
モジュール式のハードウェアとソフトウェアで構成されているため、必要に応じた拡張が可
能です。
作業の目的や環境に合わせたカスタマイズが可能です。
ハイエンドECU とローコストECU のいずれにも合わせてカスタマイズできます。
ECUソフトウェアの開発工程にも利用できます。
1.1 製品の正しい使用法
INCAとINCAアドオンは、自動車への応用を前提に開発されたものであり、それらのユーザード
キュメントに記述された範囲でのみ使用することができます。
INCAとINCAアドオンは、工業用実験室や試験用車両での使用を想定しています。
ETAS GmbHは、誤った使い方や安全情報を守らないことによって生じた損害については責任
を負いかねます。
1.2 対象ユーザー
本ソフトウェア製品および本ユーザーガイドは、自動車用ECUの開発・適合に携わる有資格者
や、ソフトウェアをインストール・保守・アンインストールするシステム管理者または管理者権限の
あるユーザーを対象としています。計測とECUに関する技術的な専門知識が必要とされます。
1.3 安全に関する注意事項の書式
以下の「安全に関する注意事項」は、人身事故や物的損害につながる危険性を警告するもの
です。
危険
記載事項を守らないと死亡または重傷のリスクが高い危険性について説明しています。
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警告
記載事項を守らないと死亡または重傷のリスクを招く可能性のある危険性について説明して
います。
注意
記載事項を守らないと軽~中程度の負傷のリスクを招く可能性のある危険性について説明し
ています。
ご注意ください!
記載事項を守らないと物的損害を招く可能性のある状況について説明しています。
1.4 本製品使用時の安全に関する注意事項
INCAとINCAアドオンを用いた作業を行う際には、以下の安全情報を遵守してください。
警告
予期しない車両の挙動を招く危険があります。
適合操作は、ECU、およびECUに接続されたシステムの挙動に影響を与えます。
その結果、エンジンが停止したり、予期せぬ車両の挙動(ブレーキング、加速、操舵など)が
発生する可能性があります。
適合操作は、製品の使用に関する講習を受け、接続されたシステムの起こり得る反応を評
価できる方のみが実施してください。
警告
予期しない車両の挙動を招く危険があります。
CAN、LIN、FlexRay、イーサネットなどのバスシステムでメッセージを送信すると、接続された
システムの動作に影響を与えます。
その結果、エンジンが停止したり、予期せぬ車両の挙動(ブレーキング、加速、操舵など)が
発生する可能性があります。
バスシステム経由のメッセージ送信は、各バスシステムの使用に関する十分な知識があり、接
続されたシステムの起こり得る反応を評価できる方のみが実施してください。
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「ETAS Safety Advice - 安全上のご注意」の指示、およびオンラインヘルプとユーザーガイドに
記載されている安全情報を遵守してください。この情報は、INCA の ヘルプ メニューから 安全上
のご注意 を選択して開くことができます。
1.5 個人情報保護に関する注意事項
INCAの使用時には個人データが処理されます。本製品の購入者は、GDPR(General
Data Protection Regulation: EU の一般データ保護規則)のArt. 4 No. 7 に従って、
これらの処理の法的適合性を確保する責任があります。製造者であるETASは、当該データの
不適切な扱いに関して、いかなる場合も責任を負いません。
詳細については、INCAオンラインヘルプを参照してください。
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2 INCA - 基本的な作業の流れ
本章はINCAの新しいユーザーを対象とした内容となっており、INCA V7.4を使い始める際に役
立つ情報がまとめられています。プログラムの機能と動作原理をご理解いただくため、実践的な
作業例をフロー図でご紹介します。具体的な例として、エンジンコントローラのラムダ制御に関す
る適合に必要な作業手順が説明されています。
本章では以下のようなシンボルや略語が使用されています。
DBM データベースマネージャ(Database Manager)
EE 実験環境(Experiment Environment)
HWC ハードウェアコンフィギュレーションエディタ(Hardware Configuration
Editor)
CDM 適合マネージャ(Calibration Data Manager)
EXP 実験(Experiment)
WS ワークスペース(Workspace)
DB データベース(Database)
以下の各項で、INCAとそのサブモジュールの構成と一般的な作業手順をご紹介します。
2.1 操作面から見た製品の構成
2.2 データベースマネージャ(DBM)での作業準備
2.3 ハードウェアコンフィギュレーション(HWC)エディタでの作業
2.4 実験環境での作業
2.5 適合データマネージャ(CDM)でのデータセットの管理
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2.1 操作面から見た製品の構成
ここでは、INCAの主な機能を、製品に含まれるソフトウェアモジュールごとに分けて説明します。
INCAは「ブロック構成コンセプト」に従って設計されています。必要に応じてアドオンパッケージ
(INCA-MIP、INCA-FLEXRAYなど)を追加し、INCAの機能を拡張することができます。
後からご購入いただいたこれらのモジュールは、使い慣れた操作環境にシームレスに統合されま
す。この仕組みにより、要件に合わせてシステム全体をカスタマイズすることが可能になります。
2.1.1 基本ソフトウェアの機能
基本ソフトウェアが外枠となり、必要なサブモジュールでその外枠の中を埋めていくことができ
す。各サブシステムはユーザーの作業工程の各段階に対応し、ユーザーインターフェース、つまりメ
ニューとダイアログボックスを持つ独自のウィンドウを備えています。
図. 2-1: INCA とそのサブシステム
各サブシステムの機能について、以下に簡単に説明します。
2.1.2 データベースマネージャ(DBM)
データベースマネージャは、INCAの心臓部です。ここから個々のサブシステムを起動します。また
ユーザーの管理や、オプションダイアログボックスを通じてユーザー固有のオプション(例、格納ディ
レクトリの定義、画面表示オプション設定やソフトウェア起動時の動作など)の設定もできます。
DBMの主要な目的は、適合・測定処理で作成されるすべてのデータ(ワークスペース、実験、
プロジェクト、データセットなど)をデータベースとして系統的に管理することです。DBMでは、使
いやすいユーザーインターフェースからデータベースアイテムを管理することができます。Windows
のエクスプローラと同様に、ディレクトリやサブディレクトリの作成、個々のアイテムの移動、コピー、
インポート、エクスポートのほか、新しいデータベースの作成も可能です。つまり、Windowsのファ
イルシステムと同じような方法でデータを構築・管理することができます。
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測定および適合作業に必要なデータや、実験中に作成されたり変更されたりするデータは、それ
ぞれ個別のデータベースアイテムとして保存されます。これらのアイテムは容易に再利用したり交
換したりすることができます。INCAはこれらのアイテムだけでなくアイテム間の参照関係も管理し
ます。データベースを使用することで、ソフトウェアがこれらの参照関係を「認識」してデータの整合
性を確保でき、ユーザーの作業環境を快適なものにします。
2.1.3 ハードウェアコンフィギュレーションエディタサブシステム(HWC エディタ)
ハードウェアコンフィギュレーションエディタは、測定/適合に使用するハードウェア環境に関する準
備作業を支援するものです。準備作業の主要目的は、どのような種類のハードウェア(測定デ
バイスやECUインターフェースデバイス)を使用するかをソフトウェア上に登録することです。この目
的のため、最適化されたワークスペースにおいて使用するハードウェアを設定できます。つまり、PC
に接続されているハードウェアとそのインターフェースを指定します。各入力から取得する測定
号や適合パラメータを指定することもできます。ECUインターフェースについては、使用するプロジェ
クトとデータセット(ワーキングデータセットとリファレンスデータセット)を指定します
ハードウェアについて設定した情報は、ワークスペース内に「ハードウェアコンフィギュレーション」と
て保存されます。このように設定されたシステム全体を使用し、「実験環境」サブシステムにおいて
さまざまな作業(コールドスタート最適化、アイドリング最適化、個々の車両コンポーネントの測
定など)を実行することができます。
データベースアイテムであるワークスペースは再利用が可能なので、このワークスペースをコピーす
ることにより、そこに定義されているハードウェアコンフィギュレーションをさまざまな実験に再利用す
ることができます。
2.1.4 実験環境(EE)サブシステム
"実験環境" サブシステムには主に、測定/適合作業の実行、およびその準備作業に必要な
機能が含まれています。ここで設定された環境は、「実験」というアイテムとしてデータベースに格
納することができます。
1つのワークスペースは1つの実験を参照します。それに対して、1つの実験を複数のワークスペー
スに割り当てることができます。
実験には、以下のような情報が含まれます。
測定チャンネルの設定
使用する測定シグナル/適合パラメータ
測定/適合ウィンドウ
実験には、ハードウェアの情報は含まれません。データやプログラムのバージョンに関する情報も含
まれません。実験はこれらのデータを参照するだけです。
このサブシステムの機能は、以下の4つのグループにまとめられます。
環境設定
実験の環境を設定します。つまり、測定や適合の対象となる変数を選択してさまざまな
ウィンドウに割り当て、各変数のサンプリングレートや測定範囲、表示パラメータなどを設
定します。
測定と記録
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測定値を表示する測定ウィンドウ(オシロスコープや棒グラフなど)を自由にカスタマイズ
できます。任意の条件(開始/終了トリガ、記録時間、反復回数など)で測定値を
記録し、測定ファイルに保存できます。
ECUパラメータの適合
特性値を、さまざまなエディタ(数値エディタ、テーブルエディタ、複合エディタなど)で、
ラフィカルに、または数値的に変更できます。また、オフセットを加えたり係数を掛けるなど
の演算機能も使用できます。測定を行いながら同時に適合を行えます。
データバージョンの管理とコピー
さまざまなデータバージョンをECUにダウンロードしたり、ECUからアップロードしたデータを
ハードディスクに保存してユーザー間で交換したりすることができます。
2.1.5 測定データアナライザ(MDA)サブシステム
実験環境で作成された測定ファイルを分析するためのオフラインツールです。分析カーソルによ
詳細な値の読み取りや、画面のズーム、シグナルの重ね合わせなど、データ分析作業を支援す
るさまざまな機能が用意されています。作業環境を「分析コンフィギュレーション」として保存し、反
復作業に利用することができます。
MDAは独立したプログラムで、個別に起動したりINCAから呼び出すこともできます。
2.1.6 適合データマネージャ(CDM)サブシステム
ソースデータセットのすべて、または一部の変数を、リストとしてファイル出力します。出力の内容
は、ユーザーオプションで任意に設定できます。
比較
ソースデータセットと他の任意の数のターゲットデータセットの値の差異を、物理値レベル
でファイル出力することができます。比較のレベル(厳密さ)は、ユーザーオプションで
意に設定できます。
コピー
ソースデータセットのすべて、または一部の変数を、他のいくつかのターゲットデータセットに
コピーできます。コピーする際、アドレスや変換式の違いをどのように考慮するかは、ユー
ザーオプションで任意に設定できます。
リスト作成
ソースデータセットのすべて、または一部の変数を、リストとしてファイル出力します。出力
の内容は、ユーザーオプションで任意に設定できます。
2.1.7 ユーザーインターフェース作成ツール(VUI)サブシステム
ユーザーインターフェース作成ツールでは、一般的なビジュアルプログラミング環境を使用し、ウィン
ドウ内に表示および適合エレメントを自由に配置してユーザー独自のカスタムユーザーインター
フェースを作成することができます。また、ラベル、ライン、四角形、スプリットバーなどの補助エレメ
ントを使用することにより、たとえば画面を複数のセグメントに分割して自由に配分を変えられる
ようにすることも可能です。ここで作成されたスクリーンレイアウトは、テンプレートとして保存され、
INCA の実験環境に任意にロードできます。
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2.1.8 ASAM-MCD-2MCエディタサブシステム
ASAM-MCD-2MCエディタでは、既存のプロジェクトのアイテムを表示・編集することができま
す。つまり、ASAM-MCD-2MCエディタを使用すれば、A2Lファイルに定義されている適合変
数、測定変数、ファンクション、さらには適合インターフェースのパラメータ設定用の情報を、表示
して編集することが可能です。このエディタを使用するには、プロジェクトディスクリプションファイル
*.a2l)をINCAに読み込んで、「プロジェクト」を作成しておく必要があります。
注記
ASAM-MCD-2MC規格についての説明、および各パラメータについての詳しい情報は、
ASAMのホームページ(www.asam.net)から入手できます。
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2.2 データベースマネージャ(DBM)での作業準備
データベースマネージャの主な目的は、適合測定処理の過程で作成されるすべてのデータアイテ
ム(ワークスペース、実験、プロジェクト、データセットなど)をデータベース内に格納し、使いやす
いユーザーインターフェースによる管理を可能にすることです。Windowsエクスプローラと同様に、
ディレクトリやアイテムを作成したり、個々のアイテムを移動、コピー、インポート、エクスポートした
りすることができ、データベースを新しく作成することもできます。
プロジェクトとは独立して、常に全体像を把握しながらすべてのデータを一元的に整理することが
できます。
データベースには以下のようなアイテムが格納され、管理されます。
ワークスペース(ハードウェアコンフィギュレーションを含みます)
実験
ECUプロジェクト(A2L)とデータセット
CDMコンフィギュレーション
適合シナリオコンフィギュレーション
測定変数カタログ
ECUドキュメントへのリンク
AUTOSARシステムテンプレート
CAN-DBディスクリプション
CANメッセージリスト(コンポーネント"CAN MessageSending" がインストールされて
いる場合のみ)
FlexRayバス通信のためのコンフィギュレーションを含むFIBEXディスクリプション
(FlexRay機能にはINCA-FlexRayアドオンが必要)
LINバス通信のためのコンフィギュレーションを含むLDFディスクリプション(LIN機能には
INCA-LINアドオンが必要)
診断のためのODXプロジェクト(診断機能にはODX-LINKアドオンが必要)
以下のようなデータは外部ファイルとして扱われ、データベース内には格納されません。
測定ファイル(*.dat
カスタムユーザーインターフェース(*.vui
*.a2l および *.dbc ファイル
*.hex および *.s19 ファイル
1つの実験環境を構成する主なデータベースアイテムは、「ワークスペース」と「実験」です。さらに
ECUインターフェースを使用する場合は、ワーキングデータセットおよびリファレンスデータセットが割
り当てられた「プロジェクト」も使用されます。次項では、新しいデータベースをセットアップしてデー
タベースアイテムを作成し、それらをフォルダにまとめる方法について説明します。
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2.2.1 新しいデータベースとフォルダ、およびデータベースアイテム(ワークスペー
ス、実験)を作成する
INCAでは複数のデータベースを扱うことができます。データ量が抑えられて扱いやすくなるため、
パフォーマンスが向上します。ここでは、実験に必要なデータを生成する前に、まず新しいデータ
ベースをセットアップし、必要な階層フォルダを作成しておきます。こうしておけば、後でデータを別
の車両や実験に容易に割り当て直すことができます。また新しいデータベースを使えば、不要な
データが存在しないため、作業しやすいという利点もあります。新しい空のデータベースを作成し
て、その中にフォルダ構造を作成し、必要なデータベースアイテムを作成していきます。
図. 2-2: データベース、フォルダ、データベースアイテムの作成
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2.2.2 プロジェクトをセットアップする
INCA で適合を行うには、まず ECU のメモリイメージを作成し、それを INCAデータベース内に
「データセット」というアイテムとして格納する必要があります。
INCA で扱う「プロジェクト」(ある特定の ECU ソフトウェアに対応するデータベースアイテム)を
作成するには、以下のファイルが必要です。
プロジェクトディスクリプションファイル(*.a2l):データの物理情報(メモリ配置、精
度など)が記述されたファイル
HEXファイル(インテル HEX ファイル *.hex、または Motorola フォーマット
*.s19):コードとデータを含む ECU プログラムが格納されたファイル
(オプション)ECUドキュメント(*.chm):ECUメーカーからECUドキュメントが供給
されている場合のみ
ECUのリファレンスページとワーキングページのデータは、INCAデータベース内においてそれぞれ「リ
ファレンスデータセット」と「ワーキングデータセット」に格納されます。読み取り専用のデータセット
は、赤枠で表示されます。
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図. 2-3: プロジェクトのセットアップ
最初にHEXファイルがデータベースに読み込まれると、ファイル内のコード部分がプロジェクト内に
格納されます(この部分はユーザーには見えません)。データ部分は、「マスタデータセット」とし
て格納されます。マスタデータセットはワーキングデータセットの作成にも使用されます。
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2.2.3 バスディスクリプションやその他のデータベースアイテムを追加す
車両バス(CANなど)の情報を交換するには、システム構成やバス通信についての情報が格
納されたバスディスクリプションファイルが必要です。各種ファイルに含まれるディスクリプションを読
み込み、データベースアイテムを作成します。
CANバス上のCANメッセージをモニタするにはCANモニタリングディスクリプションが必要で、これは
CANdbファイルまたはAUTOSARシステムテンプレート(*.arxml)として提供されます。
FlexRay バスと LIN バスの場合は、バスディスクリプションが含まれる FIBEX、 LDF、
AUTOSAR ファイルのいずれかが必要で、ODX 診断機能を使用するにはODX プロジェクトフ
イルが必要です。また、FlexRay、LIN、ODXの機能を利用するには、それぞれ専用のINCAア
ドオンをインストールする必要があります。
また実際の作業目的や各工程に応じて、CANメッセージリスト(INCAからCANバスに送信す
るCANメッセージのリスト)、測定カタログ(測定ハードウェアの各チャンネル用パラメータのプリ
セット情報)、ECUドキュメント(プロジェクトディスクリプションファイル(*.a2l)内に定義され
た各変数についての詳細情報)などのアイテムも追加できます。
図. 2-4: バスディスクリプションアイテムとその他のアイテムの追加
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2.2.4 ワークスペースのセットアップ
データベースマネージャに新たに作成されたワークスペースには、ほかのデータベースアイテムへの
参照情報がありません。ワークスペースを使用するには、プロジェクトを割り当ててハードウェア構
成を定義し、実験を割り当てる必要があります。ワークスペースを選択して所定のメニューコマン
を使用するか、または 実験プロジェクト/デバイス、またはハードウェアフィールドを利用しま
す。
図. 2-5: ワークスペースのセットアップ
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2.2.5 インポート/エクスポート機能を使用してデータ交換を行う
データベースマネージャでは、データベース内の全アイテム、または選択されたアイテムだけをエクス
ポートしたりインポートすることができます。インポート/エクスポート機能は、既存の実験の内容
を別の実験で再利用する際に活用できます。エクスポート/インポート機能は、“ データベースア
イテム” フィールドのアイテムについては 編集 メニュー、また“ データセット” フィールドのデータセット
については データセット メニューから実行します。いずれの場合もエクスポートの結果は同じ拡張
子(*.exp64)を持つファイルに保存されます。データの混同を防ぐために、各ファイルにはその
内容がわかるような名前を付けてください。
図. 2-6: インポート/エクスポート機能を利用したデータの交換
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