ETAS INCA-LIN ユーザーガイド

  • こんにちは!ETAS INCA-LIN V7.4ユーザーガイドの内容を理解しています。LINバスモニタリング、ECU測定・適合、LDF/AUTOSARファイルの使用方法など、このデバイスに関するご質問にお答えします。お気軽にご質問ください!
  • INCA-LINアドオンを使用するには、他にどのようなソフトウェア・ハードウェアが必要ですか?
    LDFファイルとは何ですか?
    ダイナミックフレームとは何ですか?
    INCA-LINはLINのどのバージョンをサポートしていますか?
ETAS INCA-LIN V7.4
ユーザーガイド
著作権について
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INCA-LIN V7.4 | ユーザーガイド R03 JP | 06.2023
本書の内容
1 はじめに 4
1.1 製品の正しい使用法 4
1.2 対象ユーザー 4
1.3 安全に関する注意事項の書式 4
1.4 個人情報保護に関する注意事項 5
2 INCA-LINの概要 6
2.1 LIN の概要 6
2.2 各種機能の操作方法 7
2.3 用語の定義 8
3 INCA-LIN アドオンのインストール 10
3.1 パッケージの内容 10
3.2 システム要件 10
3.3 INCA-LINのインストール 10
4 INCA-LINアドオンの使用方法 13
4.1 ワークスペースのセットアップ 13
4.2 LINハードウェアの設定 14
4.3 実験を設定してLINモニタリングを開始する 16
5 ご使用上のヒント 19
5.1 フレームまたはノードを指定して変数を選択する 19
5.2 フレームの生データの監視 20
5.3 LINネットワークのバスステータスの監視 20
5.4 変数とグループについての追加情報の表示 20
6 制限事項 21
6.1 LIN V1.3のシグナルグループをサポートしていない 21
6.2 1つのシグナルに複数の物理単位は使用できない 21
6.3 LINシグナルエンコーディングの処理 21
6.4 ASAM MCD-3 / ASAP3 22
6.5 識別子の最大長 22
6.6 チャンネル名のポストフィックスの定義 23
7 お問い合わせ先 24
INCA-LIN V7.4 | ユーザーガイド
本書の内容 | 3
1 はじめに | 4
1 はじめに
1.1 製品の正しい使用法
INCAとINCAアドオンは、自動車への応用を前提に開発されたものであり、それらのユーザード
キュメントに記述された範囲でのみ使用することができます。
INCA-LINアドオンと LIN インターフェースハードウェアを用いることにより、LIN バス上のシグナル
を INCA上で物理値として表示したり記録したりすること(「LIN モニタリング」)が可能になりま
す。ETKまたはCANでECUの測定/適合を行いながら、車載LINバス上の通信を監視するこ
ともできます。
INCAとINCAアドオンは、工業用実験室や試験用車両での使用を想定しています。
ETAS GmbHは、誤った使い方や安全情報を守らないことによって生じた損害については責任
を負いかねます。
1.2 対象ユーザー
本ソフトウェア製品および本ユーザーガイドは、自動車用ECUの開発・適合に携わる有資格者
や、ソフトウェアをインストール・保守・アンインストールするシステム管理者または管理者権限の
あるユーザーを対象としています。計測とECUに関する技術的な専門知識が必要とされます。
1.3 安全に関する注意事項の書式
以下の「安全に関する注意事項」は、人身事故や物的損害につながる危険性を警告するもの
です。
危険
記載事項を守らないと死亡または重傷のリスクが高い危険性について説明しています。
警告
記載事項を守らないと死亡または重傷のリスクを招く可能性のある危険性について説明して
います。
注意
記載事項を守らないと軽~中程度の負傷のリスクを招く可能性のある危険性について説明し
ています。
INCA-LIN V7.4 | ユーザーガイド
1 はじめに | 5
ご注意ください!
記載事項を守らないと物的損害を招く可能性のある状況について説明しています。
1.4 個人情報保護に関する注意事項
INCA-LINの使用時には個人データが処理されます。本製品の購入者は、GDPR(General
Data Protection Regulation: EU の一般データ保護規則)のArt. 4 No. 7 に従って、
これらの処理の法的適合性を確保する責任があります。製造者であるETASは、当該データの
不適切な扱いに関して、いかなる場合も責任を負いません。
詳細については、INCAオンラインヘルプを参照してください。
INCA-LIN V7.4 | ユーザーガイド
2 INCA-LINの概要 | 6
2 INCA-LINの概要
LINプロトコル(Local Interconnect Network)は、車両に搭載されたインテリジェントな
ンサやアクチュエータとの通信に用いられるローコストな「デファクトスタンダード」です。CANのような
帯域幅や汎用性を必要としない用途に利用されます。
INCA-LINアドオンをLINハードウェアインターフェースと組み合わせることで、INCAはLINバス上
のシグナルを物理表現で表示および記録することができます(LINモニタリング)。ETKまたは
CANでECUの測定/適合を行いながら、車載LINバス上の通信を監視することもできます。
定されるデータのタイムスタンプは、INCAで測定される他のデータのものと同期するため、通常の
データ監視のほか、システム内のエラー解析にも利用できます。
インターフェースハードウェアの設定と測定対象シグナルの選択は、LINディスクリプションファイル
(LDF、*.ldf)を用いて容易に行うことができます。LDFファイルには、シグナル、フレーム、ノー
ド、エンコーディング、設定用パラメータなど、LINバスクラスタについての情報が記述されていま
す。また、AUTOSARファイル(*.arxml)も使用できます。
現在INCAがサポートしているLINのバージョンは、V1.2、V1.3、V2.0、V2.1、V2.2です。
2.1 LIN の概要
標準的な LIN の応用環境においては、一般的に、以下のような作業を同時並行的に行いま
す。
各インターフェース(ETK、CAN)によるECUの測定と適合
タイムスタンプ同期による車載LINバスのモニタリング
シグナル記録と、そのデータを用いたオフライン分析
これらの作業においては、以下のような条件が必要となります。
物理シグナル(温度、電流値など)を扱えること
LIN ディスクリプションファイル(LDF ファイル)または AUTOSAR XML ファイル
(ARXML) が使用できること
INCA-LINはこれらの要件を完全に満たしています。
INCA-LIN V7.4 | ユーザーガイド
2 INCA-LINの概要 | 7
INCA-LINのモニタリングデバイスは、常に受動的に機能します。LIN通信に能動的には関与し
ないため、LIN通信を妨害したり影響を与えたりすることはありません。
注記
INCA-LINアドオンはLINの基本機能を追加するものです。INCAでLINハードウェアを使用
するには、INCAの各ハードウェア用のアドオンも必要となります。ハードウェアアドオンはハード
ウェアモジュールとともに提供され、ETASのウェブサイト
http://www.etas.com/en/download_center.php)からダウンロードできます。
2.2 各種機能の操作方法
一般に、LINモニタリング機能は、CANやFlexRayのモニタリング機能と非常に似ています。
INCA-LINアドオンには以下のような機能が含まれています。
インポートされたLDFファイルをファイルシステムに書き戻す
LDFファイルからINCAにインポートしたLDFファイルをファイルシステムに書き戻すことがで
きます。これを行うには、データベースマネージャの "データベースアイテム" リストボックスか
らLDFアイテムを選択し、ショートカットメニューから 書き込む >LDF を選択します。
ただし、INCAではLDFファイルを編集することはできません。LDFファイルに関してINCA
で行える操作は、インポートと、編集せずにそのままファイルシステムに書き込むことだけで
す。
INCA-LIN V7.4 | ユーザーガイド
2 INCA-LINの概要 | 8
ダイナミックフレームのサポートと事前構成
INCA-LINはダイナミックフレーム(ある1つのフレームIDに実際に割り当てられるフレーム
が、時間の経過とともに変化するフレーム)の事前構成をサポートしています。そのような
フレームが正しく解釈されるようにするため、INCAがすでに稼働中のLINバスに接続した
際にシグナルの読み取りに使用するフレームを選択しておくことができます。この設定は
ハードウェアコンフィギュレーションエディタで、LINモニタリングデバイスの "ダイナミックフレー
ム" オプションで入力することができます。
選択内容が有効となるのは、測定開始時から、次にLINマスタによってフレーム割り当て
が行われるまでの間です。このフィールドが空の場合、LINマスタがフレームを割り当てるま
で、このフレームIDでのシグナルデータ測定は行われません。
注記
ダイナミックフレームは、AUTOSAR ファイルでは使用できません。LDF ファイルの使用
時に限られます。
ノードとフレームの事前グループ化によるシグナル選択の簡略化
INCAは、ディスクリプションファイル内にリストされているすべてのフレームとノードのグループ
を自動生成します。グループには、個々のフレームまたはノードごとにサブグループが含ま
ているため、使用可能なシグナルが構造化され、変数選択ダイアログボックスで特定のシ
グナルを容易に選択できます。
LINフレームの生データのモニタリング
LINバス上に存在するすべてのデータが必ずバスディスクリプションファイルに記述されてい
るとは限りません。ハードウェアコンフィギュレーションエディタで LIN モニタリングデバイスの
フレームの生データを変数として表示オプションをセットすることにより、64 個の LIN フ
レームについて、8 バイトのペイロード部にある生データを測定変数に割り当て、監視する
ことができます。このようにして、バスディスクリプションファイル内でシグナルが定義されてい
ない場合でも、LIN フレームの内容を監視することが可能になります。
LINバスステータスを変数として監視(電源管理)
INCA-LINは、バスディスクリプションファイルに定義されている変数の他に、LIN_
PowerManagement_LIN_BusStatus グループ内)という変数を提供します。この
変数の値はLINバスの現在のステータスを示すので、他の測定データとともにバスステー
ス情報を記録することが可能になります。これにより、バス通信の中断などが発生した場
合、問題解析に役立つ情報が得られる可能性があります。
2.3 用語の定義
AUTOSAR
Automotive Open System Architecture の略。
2003年に設立された自動車産業関連団体による世界規模の開発パートナーシップ。
ECU向けの共通標準ソフトウェアアーキテクチャの開発と確立を推進しています。
INCA-LIN V7.4 | ユーザーガイド
2 INCA-LINの概要 | 9
AUTOSARファイル
INCA においては、XML フォーマットで記述されたディスクリプションファイルを指します。例え
ば、データバスやクラスタを含むシステム構成、ソフトウェアコンポーネント、ハードウェアなどに関
する情報が記述されています。
ARXML
バスで送信されるネットワークノードや信号値などのデータを記述するためのフォーマットです
LIN
LIN(Local Interconnect Network)バスは、小規模の低速ネットワークシステムで、
CANバスのローコストなサブネットワークとして、近年のインテリジェントなセンサデバイスやアク
チュエータの統合などに用いられます。
LIN規格はLINコンソーシアムにより公開され、最新のネットワーキングニーズに対応できるよ
うに継続的に強化されています。
INCA V7.4は、以下のバージョンのLIN規格に対応しています。
LIN V1.2
LIN V1.3
LIN V2.0
LIN V2.1
LIN V2.2
LIN 規格の詳細については、LIN コンソーシアムのホームページを参照してください。
LDF
LDFはLIN規格の一部で、LINクラスタ全体を定義するディスクリプションファイルのフォーマッ
トです。LDFフォーマットには、LINのノード、フレーム、信号値、物理値変換などに関する情
報が含まれています。
INCAはLDFファイルを使用して測定シグナルを生成し、物理値の算出やハードウェアコンフ
ギュレーションの設定を行います。
LDFファイルは車両メーカーから供給されます。
INCA-LIN V7.4 | ユーザーガイド
3 INCA-LIN アドオンのインストール | 10
3 INCA-LIN アドオンのインストール
本章は、INCA-LINアドオンをPCにインストールするすべてのユーザーを対象としています。ハー
ドウェア/ソフトウェア要件やインストールの準備についての情報も記載されています。
3.1 パッケージの内容
INCA-LINアドオンは以下のアイテムで構成されており、これらは別途ご購入いただく必要があ
ます。
INCA-LINソフトウェアライセンス
INCA-LINアドオンのプログラムファイル
ユーザーガイド
製品情報
3.2 システム要件
INCA-LINを使用するには、以下のハードウェアとソフトウェアが必要です。
INCA V7.4
INCAのシステム要件については、INCAインストールガイドを参照してください。
INCA-LINインターフェースハードウェア
3.3 INCA-LINのインストール
注記
INCAがすでにPCにインストールされていること、さらにそのINCAのリリース番号が
INCA-LINアドオンのリリース番号と互換性があることを確認してください。
INCAインストールパッケージをダウンロードする
1. ETASホームページで、ダウンロードセンター を開きます。
2. アイテムリストのヘッダで、INCA >INCA V7.4 >ソフトウェア を選択します。
3. インストールパッケージ(*.zip)をダウンロードします。
4. Windowsエクスプローラで、ダウンロードしたZIPファイルを選択して右クリックし、ショート
カットメニューからプロパティ を選択します。
5. 全般 タブで、セキュリティ:グループの ブロックの解除 チェックボックスをオンにします。
6. ZIPファイルを解凍します。解凍する場所は、以下の注記に従ってください。
INCA-LIN V7.4 | ユーザーガイド
3 INCA-LIN アドオンのインストール | 11
注記
セットアップされるすべてのコンポーネントの完全なファイル名とディレクトリ名には制限事
項があり、すべて所定の文字数以下にする必要があります。それぞれの文字数は個
別に計算されます。
ダウンロードしたサービスパックは、インストーラプログラム Setup_
ServicePack.exe のパスが80文字を超えないような場所に置いてください。
インストールパッケージのフォルダ構成やフォルダ名、ファイル名は、変更しないでくださ
い。
ソフトウェアをインストールする
1. PC上で実行されているETASのソフトウェアをすべて終了します。
注記
他のソフトウェア(オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムなど)の更新と
並行してINCAのインストールを行うことはできません。他の更新処理がすでに実行さ
れている場合は、その終了を待ち、PCを再起動してからINCAのインストールを行って
ください。
2. サービスパックのルートにあるSetup_ServicePack.exeを起動します。
"サービスパックインストーラ" ウィンドウが開きます。
3. インストール 列で、インストールするソフトウェア製品とアドオンを選択します。
グループの最上位のアイテムを選択すると、下位のアイテムがすべて選択されます。
4. "End User License Agreement" (ソフトウェア使用許諾契約)を読み、合意しま
した というチェックボックスをオンにします。
5. セットアップ用言語を選択します。
注記
ここで選択した言語は、サービスパックインストーラだけでなく、インストール済み、または
今後インストールされるINCAとそのアドオンにも適用されます。
6. 設定内容を確認し、インストール をクリックします。
インストールが開始され、ステータス列に各ソフトウェアの処理状況が表示されます。
7. 再起動のオプション ボタンをクリックします。
再起動について設定するためのダイアログボックスが開きます。
注記
インストールの終了後は、システムを再起動することをお勧めします。
一部のソフトウェアは、インストール処理の途中で再起動が必要になる場合がありま
す。その場合はステータス列に警告アイコン が表示され、PCの再起動後に処理が
続行されます。
INCA-LIN V7.4 | ユーザーガイド
3 INCA-LIN アドオンのインストール | 12
8. 再起動のオプションを選択します。
9. OK をクリックします。
サービスパックインストーラは、指定されたソフトウェアを自動的にサイレントモードでインストールす
るので、個別のインストールウィンドウなどは開きません。
詳細は、INCAインストールガイドを参照してください。
INCA-LIN V7.4 | ユーザーガイド
4 INCA-LINアドオンの使用方法 | 13
4 INCA-LINアドオンの使用方法
本章では、INCAにおけるINCA-LINの使用例をご紹介します。ここでは、LINモニタリングを行
うための一般的な操作方法について説明します。
INCAでLINバスのモニタリングを行うには、INCAにおいて所定の準備作業が必要です。
INCA-LINの準備作業は以下のような手順で行います。
データベースマネージャでワークスペースをセットアップする
ハードウェアコンフィギュレーションエディタでLINハードウェアを設定する
実験環境において実験をセットアップし、モニタリングを開始する
一連の手順は、通常の測定・適合作業を準備して実行する場合と同じです。ただし、LINモニ
タリングでは、LDFファイルかAUTOSARファイルが必要になります。これらはA2Lプロジェクト、
CANdb、FIBEXファイルと同様の方法で扱われます。
以下に、INCAでLINを扱う際の基本的な操作を説明します。一部の操作についてはいくつかの
方法で行うことができるものがあり、たとえばFIBEXファイルの追加は、データベースマネージャと
ハードウェアコンフィギュレーションエディタのいずれかで行うことができます。以下の説明は、一般
的な操作例を示すものです。
4.1 ワークスペースのセットアップ
LINモニタリングを行うための最初のステップとして、新しいデータベースとワークスペースを作成し、
データベースにLDFファイルを追加します。
LDFファイルは車両メーカーから供給されます。これには、測定ハードウェア構成と、LINバス経由
で利用できるシグナルについての情報が記述されています。
以下の例では、INCA-LINアドオンとともにインストールされるLIN Network SpaceCar V2.ldf
というデモファイルを使用します。
ワークスペースをセットアップする
1. 新しいデータベースを作成します。データベース >新規作成 を選択してください。
2. "新しいデータベース" ダイアログボックスで、LIN_Demo と入力します。
3. OK をクリックします。
4. 次にデータベース内にトップフォルダを作成します。編集 >追加 >トップフォルダの追加
を選択してください。
5. フォルダ名を Demo に変更して <ENTER>を押します。
6. 次に、新しいワークスペースを作成するためのトップフォルダが選択されているのを確認しま
す。ここでは、Demo フォルダを選択してください。
7. 編集 >追加 >ワークスペース を選択します。
8. ワークスペース名をLINNetworkに変更して <ENTER>を押します。
9. 次に、LDFファイルをデータベースに読み込みます。トップフォルダDemoを選択してくださ
い。
10. 編集 >追加 >FIBEX またはAUTOSARを選択します。
使用するバスディスクリプションファイルを選択するダイアログボックスが開きます。
11. LDFまたはAUTOSARファイルを選択し、開くをクリックします。
INCA-LIN V7.4 | ユーザーガイド
4 INCA-LINアドオンの使用方法 | 14
データベースマネージャの データベースアイテム リストボックスで LDF ファイルまたは AUTOSAR
LIN クラスタを選択すると、LDF ファイルに関する以下のような情報が右側の LDF リストボックス
に表示されます。
オリジナルのLDFファイルのパスとファイル名、およびその更新日
LDFファイルで使用されているLINプロトコルのバージョン(1.3、2.0など)
ファイルがLDF仕様に完全に準拠していない場合の追加情報、およびインポート中に発
生したその他の警告
4.2 LINハードウェアの設定
ワークスペースのセットアップが終了したら、コンフィギュレーションにハードウェアを追加する必要が
あります。LINモニタリングの測定を行うため、使用するハードウェアにバスディスクリプションファイル
を割り当てます。LDFおよびAUTOSARファイルには、物理シグナル値への自動変換の式など、
ハードウェアやシグナルに関連する情報が含まれているため、複雑なパラメータ入力は不要です。
LINハードウェアを追加する
1. データベースマネージャで、"LIN Network" ワークスペースを選択します。
2. "ハードウェア" リストボックス上部の ハードウェア設定 アイコンをクリックして、ハードウェア
コンフィギュレーションエディタを開きます。
ハードウェアコンフィギュレーションエディタでLINハードウェアを追加し、LDFディスクリプショ
ンを割り当てます。
3. デバイス >追加 を選択します。
"ハードウェアデバイスの追加" ダイアログボックスが開き、追加できるデバイスのインター
フェースのリストが表示されます。
4. たとえば、"ES592" フォルダの前にある +記号をクリックして展開し、次に "LIN" フォル
ダを展開します。
5. "LIN-Monitoring" というエントリを選択します。
6. OK をクリックします。
ダイアログボックスが開き、LIN通信の記述を含むLDFファイルを選択できます。
7. データベースにすでに読み込まれているLDFファイルまたはAUTOSARのLINクラスタを選
択します。
8. OK をクリックします。
次のステップでは、LINモニタリングデバイスのハードウェアパラメータを設定します。
LINハードウェアの設定と初期化を行う
1. "ハードウェアデバイス" リストから
"LIN-Monitoring:1" というノードを選択します。
2. "LIN-Monitoringパラメータ" タブを選択します。
LIN固有のパラメータが一覧表示されます。
次の表に、LIN-Monitoringパラメータ タブのパラメータとその意味を示します。
INCA-LIN V7.4 | ユーザーガイド
4 INCA-LINアドオンの使用方法 | 15
パラメータ名 説明
フレームの生データを変数として表示 このオプションを使用すると、64のLINフレームごとに
8バイトのペイロードの生データを選択できるかどうか
を決定できます。
"変数の選択" ダイアログボックスでは、個々のフレー
ムがINCAによって生成された64個の変数として表
されます。各フレームはヘッダフィールドと応答フィール
ドで構成されていますが、INCAは応答フィールドに
ついてのみ、1つのフレームを8バイトのバイト配列と
して表します。
LINバージョン バスディスクリプションファイルで使用されているLIN
バージョンが表示されます。
LINの通信速度 LINデータの転送レート(kBaud)が表示されま
す。転送レートはバスディスクリプションファイル内に
定義されています。
コンフィギュレーション LDFファイルに、1つ以上のコンフィギュレーションが定
義された Node_composition_definition
ブロックを含めることができます。各コンフィギュレー
ションには、使用されるLDFノードが定義されていま
す。
このパラメータで、それらのコンフィギュレーションのう
ち、どれを使用してLINモニタリングを行うかを選択し
ます。LDFファイルにコンフィギュレーションバリアントが
含まれていない場合は、"--" という文字列が表示
されます。
ダイナミックフレーム このパラメータは、LDFファイルに対応するセクション
が含まれている場合にのみ表示されます。
LDFファイルに、このフレームIDに割り当てられるフ
レームが変更される場合があることが定義されていま
す。このフィールドで、最初のシグナルデコーディング
に使用するフレームを決定します。
選択内容が有効となるのは、測定開始時から、次
にLINマスタによってフレーム割り当てが行われるまで
の間です。このフィールドが空の場合、LINマスタがフ
レームを割り当てるまで、このフレームIDでのシグナ
ルデータ測定は行われません。
上記の前提条件を理解したうえで、インターフェースの設定とハードウェアの初期化に進みましょ
う。
1. LINパラメータリスト内の "フレームの生データを変数として表示" というフィールドの右側
のフィールドをクリックします。
2. 同じフィールドを再度クリックしてリストを開き、Yes を選択します。
INCA-LIN V7.4 | ユーザーガイド
4 INCA-LINアドオンの使用方法 | 16
このオプションを Yes に設定すると、個々のフレームの生データを選択できます。
3. LINパラメータリスト内の "ダイナミックフレーム" フィールドの前にある +記号をクリックして
ツリー構造を展開します。
4. "フレームID 2" というパラメータの右側のフィールドをクリックして、VL1_LSM_Frm1
いうエントリを選択します。
このフレームは、LINマスタが別のフレームを明示的に割り当てるまで、デフォルトでシグナ
ルデコーディングに使用されます。
注記
ダイナミックフレーム用パラメータは、割り当てられたLDFファイル内にダイナミックフレーム
が定義されている場合にのみ表示されます。この例で使用しているデモファイルにはダイ
ナミックフレームが含まれています。
5. 適用 をクリックして、新しい設定を有効にします。
6. ハードウェア >ハードウェア初期化 を選択します。
下図の LIN-Monitoring:1 というエントリの前にあるアイコンは、接続ステータスを示していま
す。緑色のアイコンは、初期化がすでに成功し、デバイスへの接続が確立されていることを示して
います。
これでハードウェアコンフィギュレーションが完了したので、ハードウェアコンフィギュレーションエディタ
を閉じることができます。
4.3 実験を設定してLINモニタリングを開始する
実験環境では、バスディスクリプションファイルに定義されたすべてのシグナルを選択してモニタする
ことができます。
またさらに、各LINフレームの生データやLINネットワークのバス状態をモニタすることもできます。
実験をセットアップする
1. データベースマネージャで、LINネット ワ を選択し、
2. "実験" リストボックス上部の 実験開始 ボタンをクリックして実験環境ウィンドウに新しい
実験を開きます。
3. 実験に追加したい変数を選択して設定します。
4. まずは、"実験" ウィンドウで、変数 >変数の選択 を選択します。
"変数の選択" ダイアログボックスが開きます。
5. "ソース" リストから LIN-Monitoring:1 デバイスを選択します。
INCA-LIN V7.4 | ユーザーガイド
4 INCA-LINアドオンの使用方法 | 17
上記の操作を行うと、変数リスト内に、選択したデバイスの全シグナルが測定変数としてアルファ
ベット順に表示されます。その際に、表示されるべき変数が表示されなかったり、変数がまったく表
示されなかったりする場合があります。その場合は、フィルタが使用されていないかを確認してくだ
さい。ツールバーで "すべてのフィルタをクリア" ボタンをクリックすると、すべてのフィルタが非アク
ティブ化されます。
特定のノードまたはフレーム用の変数についてのみ作業を行うには、"ソース" リスト内に表示され
ているデバイス名の左端の +アイコンをクリックして、デバイスツリーを展開し、ツリー構造を参照し
て目的のノードまたはフレームを選択します。すると、その ノードまたはフレーム用の変数のみが変
数リストに表示されます(詳しくは、「フレームまたはノードを指定して変数を選択する」(ページ
19)を参照してください。)これらのケースをまとめると、変数の選択には以下の方法がありま
す。
LINデバイスをクリックし、そのデバイスのシグナルの完全なリストから必要なシグナルを選
択します。
LINデバイスの前にある + アイコンをクリックしてツリー構造を展開し、さらにいずれかのグ
ループ(フレームまたはノード)を展開して目的のアイテムをクリックします。そして選択し
たフレームまたはノードに関連付けられたシグナルを含むサブセットから目的の変数を選択
できます。
すべてのグループは、"ソース" リストのツリービュー内にある次のアイコンで表示されます
6. 変数リストから、監視したい変数をすべて選択します。
変数を選択すると、ダイアログボックスの情報ペインに詳細情報が表示されます。
7. OK をクリックして、選択された変数を実験ウィンドウに追加します。
選択された変数が、実験環境の基本測定ウィンドウに表示されます。
8. 同様に監視するフレームの生データを選択するには、"変数の選択" ダイアログボックスを
開きます。
9. "ソース" リストから LIN-Monitoring:1 デバイスを選択します。
10. その下のGroupsブックを開き、さらに "_LIN_Frames" ブックを開いて、サブエントリ _
LIN_FrameRawData を選択します。
変数リストに、各フレームに対応する64個のエントリが表示されます。これらの名前は、そ
れらが属するフレームの名前にサフィックス _ID00 から _ID63 を追加したものになりま
す。
注記
フレームの生データは、ハードウェアコンフィギュレーションエディタで "フレームの生データ
を変数として表示" パラメータの値を Yes にした場合にのみ表示されます。
11. 変数リスト内のエントリを1つ選択します。
サブダイアログボックスが開き、フレームの応答が8つの要素を含むバイト配列として表示さ
れます。
12. サブダイアログボックス内の全アイテムを選択して応答全体を監視対象にし、閉じる をク
リックします。
INCA-LIN V7.4 | ユーザーガイド
4 INCA-LINアドオンの使用方法 | 18
13. 同じ方法で、フレーム生データを監視するための他のエントリを必要に応じて追加します。
14. LINネットワークのバスステータスを監視するために使用される変数を追加します。
15. "ソース" リストから _LIN_BusStatus グループを選択します。
16. LIN_PowerManagement という変数が変数リストに表示されます。
17. 変数リストで、この変数を選択します。
18. OK をクリックして、選択されたすべての変数を実験ウィンドウに追加します。
19. 実験 >保存 を選択します。
20. "名前を付けて保存" ダイアログボックスが開きます。"データベースアイテム" リスト
Demo フォルダを選択して、実験をフォルダに追加します。"アイテム名" フィールドに
Monitoring_Exp という名前を入力し、OK をクリックします。
これで実験の準備ができたので、LINバス上のシグナルの物理値、フレーム生データ、およびバ
ステータスの監視を開始することができます。
監視を開始する
1. 記録を行わずに表示を開始するには、<F11> を押します。
または
記録を開始するには <F12> を押します。
INCA-LIN V7.4 | ユーザーガイド
5 ご使用上のヒント | 19
5 ご使用上のヒント
本章では、理解しにくい作業や、ちょっとした工夫で最適化できる作業を行う際に役立つヒントを
ご紹介します。
5.1 フレームまたはノードを指定して変数を選択する
一般的に、INCAの実験環境での測定作業や適合作業に使用する変数を決定するには、"変
数の選択" ダイアログボックスにおいて、デバイスまたはそのデバイスのファンクションを選択し、変数
リストに表示された変数を選択します。
CANモニタリングデバイスの場合は、変数はCANフレームによってグループ化されるため、すべての
変数のリストから、または選択したCANフレームのみに属する変数のサブリストから変数を選択で
きます。
同じ原理に従って、LINデバイスの変数は次のカテゴリのいずれかでグループ化することができま
す。そのため、"変数の選択" ダイアログボックスの "ソース" リスト内のLINモニタリングデバイスに
は、_LIN_Frames _LIN_Nodes というグループが自動的に追加されます。
下図のように、“変数の選択 ” ダイアログボックスにおいて各グループは アイコンで示されま
す。
フレームによるグループ化:
"ソース" リストで _LIN_Frames グループ内のフレームを選択すると、そのフレームで送信
されるすべてのシグナルが変数リストに表示されます。
注記
LDFファイルのディスクリプションの内容によっては、1つのシグナルが複数のフレームに属
する場合があります。
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5 ご使用上のヒント | 20
ノードによるグループ化:
"ソース" リストで _LIN_Nodes グループ内のノードを選択すると、そのノードのすべてのシ
グナル(つまりノードで送信されるシグナル)が変数リストに表示されます。
5.2 フレームの生データの監視
INCA-LINには、64個のLINフレームについて、各フレームの8バイトのペイロード部の生データを
個別に監視できるオプションがあります。各フレームはヘッダフィールドと応答フィールドで構成され
ていますが、INCAは応答フィールドについてのみ、1つのフレームを8バイトのバイト配列として表
します。
ハードウェアコンフィギュレーションエディタにおいてこのオプションが有効に設定されていると、変数
選択ダイアログボックスにLIN生データの変数が表示されます。
このように、INCA-LINにおいて各フレームのデータは、シグナルとして解釈するのではなくそれぞ
れ個別に選択することができます。そのため、シグナルが LDF や AUTOSAR ファイル内に定義さ
れていなくても LIN フレームの内容を監視することが可能です。
5.3 LINネットワークのバスステータスの監視
LINネットワークは常に完全な状態で稼働しているとは限りません。未接続であったり、スタンバイ
モードや初期化中であったりする場合もあります。
INCAがバスステータスを扱えるようにするため、INCA-LINアドオンは、LINバスの現在の状態を
表す変数を自動的に提供します。これらの変数はバスディスクリプションファイルには含まれていま
せん。
変数には以下のような値がセットされます。
power off(パワーOFF)
initializing(初期化中)
operational(使用可能)
stand by(スタンバイ)
INCA の実験において、LIN バス上に送信された LIN シグナルの値と同期してこの変数LIN_
PowerManagementの値を記録しておくことができます。これは、LIN 通信に障害(シグナルが
送信されなかったり送信シグナルに誤りがあるような場合)が発生した際に役出ちます。このデー
タを詳しく分析することにより、障害発生時の LIN ネットワークの稼働状態を調べることができ
す。
5.4 変数とグループについての追加情報の表示
LDFファイルおよびAUTOSARファイルには、INCAに直接表示されない変数やグループに関する
追加情報(フレームのフレームIDなど)を含めることができます。この情報を表示するには、変
数選択ダイアログボックスで目的のアイテムを選択し、ショートカットメニューから 変数について
情報 または 変数コンテナについての情報 を選択します。
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