ETAS INCA-FLEXRAY ユーザーマニュアル

タイプ
ユーザーマニュアル
ETAS INCA-FlexRay V7.4
ユーザーガイド
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INCA-FlexRay V7.4 | ユーザーガイド R03 JP | 06.2023
本書の内容
1 はじめに 4
1.1 製品の正しい使用法 4
1.2 対象ユーザー 4
1.3 安全に関する注意事項の書式 4
1.4 本製品使用時の安全に関する注意事項 5
1.5 個人情報保護に関する注意事項 5
2 INCA-FlexRayの概要 6
2.1 一般情報 6
2.2 用語の定義 7
3 INCA-FLEXRAYアドオンのインストール 9
3.1 パッケージの内容 9
3.2 システム要件 9
3.3 INCA-FlexRayのインストール 9
4 INCA-FlexRayアドオンの使用方法 12
4.1 ワークスペースのセットアップ 12
4.2 FlexRayハードウェアの設定 13
4.2.1 FlexRayハードウェアの設定-FlexRayモニタリング 14
4.2.2 FlexRayハードウェアの設定-XCP on FlexRayによる測定/適合 16
4.2.3 ハードウェアコンフィギュレーションエディタでSTARTUP/SYNCコントローラを選択する 18
4.3 実験をセットアップしてFlexRayモニタリングを開始する 18
5 ご使用上のヒント 20
5.1 フレーム、ECU、シグナルグループを指定して変数を選択する 20
6 制限事項 21
6.1 FIBEXデータ型の一部がサポートされない 21
6.2 FlexRayプリアンブルインジケータビットセットのデータの破棄 21
6.3 ハードウェア初期化時のFlexRayネットワークの一時的なシャットダウン 21
6.4 FlexRayバス負荷によるPCのオーバーロード 21
6.5 ASAM MCD-3 / ASAP3 22
6.6 XCPプロトコルによる診断には未対応 22
6 お問い合わせ先 23
INCA-FlexRay V7.4 | ユーザーガイド
本書の内容 | 3
1 はじめに | 4
1 はじめに
1.1 製品の正しい使用法
INCAとINCAアドオンは、自動車への応用を前提に開発されたものであり、それらのユーザード
キュメントに記述された範囲でのみ使用することができます。
INCAとINCA-FlexRayは、FlexRayチャンネル上の信号を物理的な表現でモニタリングするこ
とによってFlexRayバスを搭載した車両のECUの計測/適合をサポートし、XCP on FlexRay
インターフェースによる計測/適合にも対応しています。
INCAとINCAアドオンは、工業用実験室や試験用車両での使用を想定しています。
ETAS GmbHは、誤った使い方や安全情報を守らないことによって生じた損害については責任
を負いかねます。
1.2 対象ユーザー
本ソフトウェア製品および本ユーザーガイドは、自動車用ECUの開発・適合に携わる有資格者
や、ソフトウェアをインストール・保守・アンインストールするシステム管理者または管理者権限の
あるユーザーを対象としています。計測とECUに関する技術的な専門知識が必要とされます。
1.3 安全に関する注意事項の書式
以下の「安全に関する注意事項」は、人身事故や物的損害につながる危険性を警告するもの
です。
危険
記載事項を守らないと死亡または重傷のリスクが高い危険性について説明しています。
警告
記載事項を守らないと死亡または重傷のリスクを招く可能性のある危険性について説明して
います。
注意
記載事項を守らないと軽~中程度の負傷のリスクを招く可能性のある危険性について説明し
ています。
ご注意ください!
記載事項を守らないと物的損害を招く可能性のある状況について説明しています。
INCA-FlexRay V7.4 | ユーザーガイド
1 はじめに | 5
1.4 本製品使用時の安全に関する注意事項
INCAとINCAアドオンを用いた作業を行う際には、以下の安全情報を遵守してください。
警告
予期しない車両の挙動を招く危険があります。
適合操作は、ECU、およびECUに接続されたシステムの挙動に影響を与えます。
その結果、エンジンが停止したり、予期せぬ車両の挙動(ブレーキング、加速、操舵など)が
発生する可能性があります。
適合操作は、製品の使用に関する講習を受け、接続されたシステムの起こり得る反応を評
価できる方のみが実施してください。
警告
予期しない車両の挙動を招く危険があります。
CAN、LIN、FlexRay、イーサネットなどのバスシステムでメッセージを送信すると、接続された
システムの動作に影響を与えます。
その結果、エンジンが停止したり、予期せぬ車両の挙動(ブレーキング、加速、操舵など)が
発生する可能性があります。
バスシステム経由のメッセージ送信は、各バスシステムの使用に関する十分な知識があり、接
続されたシステムの起こり得る反応を評価できる方のみが実施してください。
「ETAS Safety Advice - 安全上のご注意」の指示、およびオンラインヘルプとユーザーガイドに
記載されている安全情報を遵守してください。この情報は、INCA の ヘルプ メニューから安全上
のご注意を選択して開くことができます。
1.5 個人情報保護に関する注意事項
INCA-FlexRayの使用時には個人データが処理されます。本製品の購入者は、GDPR
(General Data Protection Regulation: EU の一般データ保護規則)のArt. 4 No.
7 に従って、これらの処理の法的適合性を確保する責任があります。製造者であるETASは、
当該データの不適切な扱いに関して、いかなる場合も責任を負いません。
詳細については、INCAオンラインヘルプを参照してください。
INCA-FlexRay V7.4 | ユーザーガイド
2 INCA-FlexRayの概要 | 6
2 INCA-FlexRayの概要
標準化された通信システムのひとつである「FlexRayバスシステム」は、近年、自動車エンジニア
リングプロジェクトにおける重要性が高まってきています。理由としては、CANバスでの限界をはる
かに超えるデータ量を転送できることや、冗長性による安全性の確保、さらには決定論的な設
計により確実なメッセージ転送が保証される点などがあげられます。
INCAでは、FlexRayバスで接続されたECUの測定/適合を行うための機能として、FlexRay
チャンネル上で伝送されるシグナルを物理表記でモニタしたり、XCP on FlexRayインターフェ
ス経由での測定/適合を行ったりすることができます。測定されるデータのタイムスタンプは、
INCAで測定される他のデータのものと同期するため、通常のデータ監視のほか、システム内のエ
ラー解析にも利用できます。
ETK、CAN、XCP on FlexRayによるECU適合を実行しながら、FlexRayチャンネルのシグナ
ルをサンプリングし、INCAで取得した他のすべてのデータとともに測定ファイルに保存してオフライ
ンで分析することができます。INCAでFlexRayモニタリングを行う際の操作方法は、従来の
CANモニタリングの方法に準じています。モニタできるシグナルはFIBEXファイル内に定義されてい
ます。
INCA でFlexRay モニタリングを行う際の操作方法は、従来のCAN モニタリングの方法に準じ
ています。モニタできるシグナルはFIBEX またはAUTOSARファイル内に定義されています。
INCAは、FlexRayクラスタに関する情報を、FIBEXファイルまたはAUTOSARファイルからバス
ディスクリプションファイルとしてインポートします。さらに、バスディスクリプションファイルから得た情報
は、INCAに接続されたFlexRayインターフェースハードウェアの設定にも使用されまます。
2.1 一般情報
FlexRayの一般的なユースケースでは、複数の作業を同時に行えることが要求されます。
各インターフェース(ETK、CAN、XCP on FlexRay)によるECUの測定と適合
タイムスタンプ同期による車載FlexRayバスのモニタリング
シグナル測定と、そのデータを用いたオフライン分析
これらの作業においては、以下のような条件が必要となります。
シグナル(温度、電圧値など)を物理値で扱えること
FIBEXまたはAUTOSAR規格に準拠したフォーマットで記述されたネットワーク情報が利
用できること
INCA-FlexRayはこれらの要件を完全に満たしています。
INCA-FlexRay V7.4 | ユーザーガイド
2 INCA-FlexRayの概要 | 7
注記
INCA-FlexRayアドオンはFlexRayの基本機能をINCAに追加するものです。INCAで
FlexRayハードウェアを使用するには、INCAの各ハードウェア用のアドオンも必要となります。
ハードウェアのアドオンはハードウェア本体とともに出荷され、必要に応じて ETAS ダウンロード
センターからダウンロードすることもできます。
2.2 用語の定義
AUTOSAR
Automotive Open System Architecture の略。
2003年に設立された自動車産業関連団体による世界規模の開発パートナーシップ。
ECU向けの共通標準ソフトウェアアーキテクチャの開発と確立を推進しています。
AUTOSARファイル
INCA においては、XML フォーマットで記述されたディスクリプションファイルを指します。例え
ば、データバスやクラスタを含むシステム構成、ソフトウェアコンポーネント、ハードウェアなどに関
する情報が記述されています。
ARXML
バスで送信されるネットワークノードや信号値などのデータを記述するためのフォーマットです
INCA-FlexRay V7.4 | ユーザーガイド
2 INCA-FlexRayの概要 | 8
FlexRay
FlexRayは、拡張性と耐障害性を兼ね備えた通信システムで、高速かつ決定論的なデー
タ転送を実現するものです。時間分割式による確実な通信が行われるため、安全部品にも
応用できます。2つのチャンネル上で10 MBit/sの転送レートを実現できるので、先進的な
電子機器を多く搭載する車両において、ネットワークでの膨大な量のデータ転送が可能とな
ります。
通信システムの仕様は、FlexRayコンソーシアムからリリースされており、各国の車両メーカー
やサプライヤによって幅広くサポートされています。
FIBEX
FIBEX(Field Bus Exchange)は、XML形式のデータ交換フォーマットで、車載通信
ネットワークの仕様を記述するものです。FIBEXはさまざまなタイプのネットワーク(CAN、
LIN、MOST、FlexRay)用に定義されており、記述内容には、バス構成、シグナル、コン
トローラプロパティなどの情報が含まれます。
INCAはFIBEXファイルの情報をもとに、ツールやECUをFlexRayクラスタの通信方式に合
わせて調整します。つまりFIBEXファイルには、接続されたクラスタにおいてINCAでモニタリン
グできるシグナルが定義されており、インターフェースハードウェアの設定データも含まれていま
す。FIBEXファイルはFlexRayクラスタ全体を記述し、クラスタごとに1つのFIBEXファイルが
存在します。XCP on FlexRayインターフェースを使用している場合は、FIBEXファイル内の
定義(XCPプロトコル用に予約されたフレームを含むFlexRayクラスタについての記述)と
ラスタの一部であるECUのA2Lファイルの定義(1つのECUのXCPプロトコルで使用可能な
バッファについての記述)が一致している必要があります。
FIBEXファイルは車両メーカーから供給されます。
FIBEXファイルのフォーマットは、ASAM(Association for Standardization of
Automation- and Measuring Systems)によって策定されました。
FIBEX標準についての詳しい情報は、http://www.asam.netからダウンロードできます
XCP
XCP(eXtended Calibration Protocol:拡張適合プロトコル)は、ECUと適合ツール
間の通信プロトコルのひとつで、メーカーやインターフェースの違いに影響されません。XCPは、
ASAM e.V によって策定されたものです。
INCA-FlexRay V7.4 | ユーザーガイド
3 INCA-FLEXRAYアドオンのインストール | 9
3 INCA-FLEXRAYアドオンのインストール
本章は、INCA-FlexRayアドオンをPCにインストールするすべてのユーザーを対象としています。
ハードウェア/ソフトウェア要件やインストールの準備についての情報も記載されています。
3.1 パッケージの内容
INCA-FlexRayアドオンは以下のアイテムで構成されており、これらは別途ご購入いただく必要
があります。
INCA-FlexRayソフトウェアライセンス
INCA-FlexRayアドオンのプログラムファイル
ユーザーガイド
製品情報
avi形式のデモクリップ(Windows Media Player対応)
3.2 システム要件
INCA-FlexRayを使用するには、以下のハードウェアとソフトウェアが必要です
INCA V7.4
INCAのシステム要件については、INCAインストールガイドを参照してください。
INCA-FlexRayインターフェースハードウェア
3.3 INCA-FlexRayのインストール
注記
INCAがすでにPCにインストールされていること、さらにそのINCAのリリース番号が
INCA-FlexRayアドオンのリリース番号と互換性があることを確認してください
INCAインストールパッケージ(サービスパック)をダウンロードする
1. ETASホームページで、ダウンロードセンター を開きます。
2. アイテムリストのヘッダで、INCA >INCA V7.4 >ソフトウェア を選択します。
3. インストールパッケージ(*.zip)をダウンロードします。
4. Windowsエクスプローラで、ダウンロードしたZIPファイルを選択して右クリックし、ショート
カットメニューから プロパティ を選択します。
5. 全般 タブで、セキュリティ:グループの ブロックの解除 チェックボックスをオンにします。
6. ZIPファイルを解凍します。解凍する場所は、以下の注記に従ってください。
INCA-FlexRay V7.4 | ユーザーガイド
3 INCA-FLEXRAYアドオンのインストール | 10
注記
セットアップされるすべてのコンポーネントの完全なファイル名とディレクトリ名には制限事
項があり、すべて所定の文字数以下にする必要があります。それぞれの文字数は個
別に計算されます。
ダウンロードしたサービスパックは、インストーラプログラム Setup_
ServicePack.exe のパスが80文字を超えないような場所に置いてください。
インストールパッケージのフォルダ構成やフォルダ名、ファイル名は、変更しないでくださ
い。
インストールを行う
1. PC上で実行されているETASのソフトウェアをすべて終了します。
注記
他のソフトウェア(オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムなど)の更新と
並行してINCAのインストールを行うことはできません。他の更新処理がすでに実行さ
れている場合は、その終了を待ち、PCを再起動してからINCAのインストールを行って
ください。
2. サービスパックのルートにあるSetup_ServicePack.exeを起動します。
"サービスパックインストーラ" ウィンドウが開きます。
3. インストール 列で、インストールするソフトウェア製品とアドオンを選択します。
グループの最上位のアイテムを選択すると、下位のアイテムがすべて選択されます。
4. "End User License Agreement" (ソフトウェア使用許諾契約)を読み、合意しま
した というチェックボックスをオンにします。
5. セットアップ用言語を選択します。
注記
ここで選択した言語は、サービスパックインストーラだけでなく、インストール済み、または
今後インストールされるINCAとそのアドオンにも適用されます。
6. 設定内容を確認し、インストール をクリックします。
インストールが開始され、ステータス列に各ソフトウェアの処理状況が表示されます。
7. 再起動のオプション ボタンをクリックします。
再起動について設定するためのダイアログボックスが開きます。
注記
インストールの終了後は、システムを再起動することをお勧めします。
一部のソフトウェアは、インストール処理の途中で再起動が必要になる場合がありま
す。その場合はステータス列に警告アイコン が表示され、PCの再起動後に処理が
続行されます。
INCA-FlexRay V7.4 | ユーザーガイド
3 INCA-FLEXRAYアドオンのインストール | 11
8. 再起動のオプションを選択します。
9. OK をクリックします。
サービスパックインストーラは、指定されたソフトウェアを自動的にサイレントモードでインストールす
るので、個別のインストールウィンドウなどは開きません。
インストールについての詳細は、INCAインストールガイドを参照してください。
INCA-FlexRay V7.4 | ユーザーガイド
4 INCA-FlexRayアドオンの使用方法 | 12
4 INCA-FlexRayアドオンの使用方法
本章では、INCAにおけるINCA-FlexRayの使用例をご紹介します。FlexRayモニタリングのほ
か、XCP on FlexRayインターフェース経由の測定/適合を行うための一連の操作方法が説
明されています。
INCAでFlexRayバスのモニタリングを行うには、INCAにおいて所定の準備作業が必要です
INCA-FlexRayの準備作業は以下のような手順で行います。
データベースマネージャでワークスペースをセットアップする
ハードウェアコンフィギュレーションエディタでFlexRayインターフェースハードウェア(以下
「FlexRayハードウェア」とも記します)をセットアップする
実験環境において実験をセットアップし、測定/適合を開始する
一連の手順は、通常の測定・適合作業を準備して実行する場合と同じです。ただし、FIBEXま
たはAUTOSARファイルからFlexRayクラスタの情報を取得する必要があります。FIBEXファイル
はCANdbファイルと同様の方法で扱われます。
以下に、INCAでFlexRayを扱う際の基本的な操作を説明します。一部の操作についてはいく
つかの方法で行うことができるものがあり、たとえばFIBEXファイルの追加は、データベースマネー
ジャとハードウェアコンフィギュレーションエディタのいずれかで行うことができます。以下の説明は、
一般的な操作例を示すものです。
4.1 ワークスペースのセットアップ
FlexRayモニタリングを行うための最初のステップとして、新しいデータベースとワークスペースを作
成し、データベースにFIBEXファイルまたはAUTOSARファイルを追加します。
バスディスクリプションファイルは、車両メーカーから供給されます。これには、測定ハードウェア構成
と、FlexRayバス経由で利用できるシグナルについての情報が記述されています。
ワークスペースをセットアップする
1. 最初に新しいデータベースを作成します。データベース >新規作成 を選択してください。
2. "新しいデータベース" ダイアログボックスで、FlexRay_Demo と入力します。
3. OK をクリックします。
4. データベース内にトップフォルダを作成します。編集 >追加 >トップフォルダの追加 を選
択してください。
5. フォルダ名を Demo に変更して <ENTER>を押します。
6. ワークスペースを作成するためのトップフォルダが選択されているのを確認します。ここ
は、Demo フォルダを選択してください。
7. 編集 >追加 >ワークスペース を選択します。
8. ワークスペース名を FlexRay に変更して <ENTER>を押します。
9. バスディスクリプションファイルをデータベースに追加します。トップフォルダ Demo を選択しま
す。
10. 編集 >追加 >FIBEX またはAUTOSARを選択します。
使用するバスディスクリプションファイルを選択するダイアログボックスが開きます。
11. バスディスクリプションファイルを選択して 開く をクリックします。
INCA-FlexRay V7.4 | ユーザーガイド
4 INCA-FlexRayアドオンの使用方法 | 13
12. 次に、FlexRayクラスタ内のECUについて記述されているECUプロジェクトファイルをデー
タベースに読み込みます。一番上の Demo フォルダが選択されていることを確認します。
13. 編集 >追加 >ECUプロジェクト(A2L) を選択します。
ECUプロジェクトを選択するダイアログボックスが開きます。
14. A2Lファイルを選択して 開く をクリックします。
続いてプロジェクト用データセットを選択するダイアログボックスが開きます。
15. データセットファイル(HEXファイル)を選択して 開く をクリックします。
同じ方法で、FlexRayクラスタ内の各ECU用のプロジェクトとデータセットを追加します
4.2 FlexRayハードウェアの設定
ワークスペースのセットアップが終了したら、コンフィギュレーションにハードウェアを追加する必要が
あります。
そしてさらに、FlexRay モニタリングやFlexRay インターフェース経由の測定/適合を行うため、
このハードウェアにFIBEX ファイルまたはAUTOSAR ファイルに記載されているFlexRay クラスタ
を割り当てます。バスディスクリプションファイルにはハードウェア(ネットワークやコントローラなど)
についての情報やシグナルに関する情報(物理値への変換式など)が記述されているため、
INCA 上で煩雑なパラメータ設定を行う必要はありません。1つのFIBEX/ AUTOSARファイル
内に1つのFlexRay クラスタの情報が記述されています。
XCPデバイスを使用する場合は、使用するハードウェアにECUプロジェクトファイルを割り当てま
す。ECUプロジェクトファイルには、ECUのXCPプロトコル用のバッファについての情報が記述され
ています。ECUごとに1つのECUプロジェクトファイルが必要です。
注記
FIBEX/ AUTOSARファイルの記述とECUプロジェクトファイルの記述が一致していることを確
認してください。両ファイルの記述に矛盾がある場合、ハードウェアを正しく初期化できません。
次のセクションで、FlexRayモニタリングを行う場合と、FlexRay経由のXCPによる測定/適合
を行う場合のハードウェア設定方法を説明します。
INCA-FlexRay V7.4 | ユーザーガイド
4 INCA-FlexRayアドオンの使用方法 | 14
4.2.1 FlexRayハードウェアの設定-FlexRayモニタリング
FlexRayモニタリング用のFlexRayハードウェアを追加する
1. データベースマネージャで、FlexRayワークスペースを選択します。さらに ハードウェア リス
トボックス上部の ハードウェア設定 ボタンをクリックして "ハードウェアコンフィギュレーション
エディタ" を開きます。
2. ハードウェアコンフィギュレーションエディタで、FlexRayモニタリングに使用するFlexRay
ハードウェアを追加し、FIBEXまたはAUTOSARディスクリプションを割り当てます。デバイ
>追加 を選択してください。
"ハードウェアデバイスの追加" ダイアログボックスが開き、追加できるデバイスのインター
フェースのリストが表示されます。
3. "ES512" フォルダの手前にある +アイコンをクリックして展開し、さらに "FLX" フォルダを
展開して、FLX Monitoring Aというエントリを選択します。
4. OK をクリックします。
ダイアログボックスが開き、リストからFIBEXファイルまたはFlexRay通信の記述を含む
AUTOSARファイルのFlexRayクラスタを選択できます。
5. FlexRayバスディスクリプションファイルを選択します。
6. OK をクリックします。
ここで次の操作(「FlexRayハードウェアの構成と初期化を行う」(ページ16))に進む前に
FlexRay コントローラの設定に関する背景を説明します。
1つのFlexRayバスには2つの物理チャンネル(チャンネルAおよびチャンネルB)が存在します
各コントローラに搭載された1つのFlexRayコントローラがチャンネルAとBの両方を使用します。2
つのチャンネルは、独立的には機能しません。1つのネットワークに接続される全コントローラによっ
て1つの「クラスタ」が構成されます。
INCAは、INCAに接続されたすべてのインターフェースハードウェアの両チャンネルから全フレーム
を取得できます。また、同時に1~4個のFlexRayクラスタ、つまり1~8個のFlexRayチャンネル
をモニタすることができます。
INCA-FlexRay V7.4 | ユーザーガイド
4 INCA-FlexRayアドオンの使用方法 | 15
次のステップで、ハードウェアデバイス リスト内の FLX:1 コントローラを選択すると、INCA-
FlexRay ハードウェアインターフェースの構成用のコントローラを選択できます。コントローラ ドロッ
プダウンリストには、FIBEXディスクリプションファイルで定義されているすべてのコントローラが含ま
れています(1) )。
最後に、FlexRayの起動に使用するコントローラを指定します。
FlexRayの規格では、より高い安全性の確保のためには、1つのFlexRayクラスタには3つ以上
のSTARTUPコントローラが含まれていなければならないとされています。
文字列STARTUPに続く数字は、スタートアップ情報の送信に使用されるスロットID(KEY_
SLOT_ID)を10進数で表したものです。このようなコントローラを選択することによって、INCA
が2番目のSTARTUPコントローラとして機能することができ、物理的なSTARTUPコントローラ
が1つしか存在しない環境において、INCAがFlexRayネットワーク上の通信内容をモニタでき
ようになります。
次の図は、ハードウェアコンフィギュレーションにおいてSTARTUPコントローラが選択されている例
を示しています。
注記
ES595 FlexRayネットワークモジュールなどの特定のデバイスは、2つのSTARTUPコントロー
ラを起動する機能をサポートしています。このようなハードウェアを使用する場合は、ハードウェ
アコンフィギュレーションエディタ上に追加のフィールドが追加され、2番目のStartup/Syncコン
トローラを選択することができます。
1) FlexRayのコントローラには、以下の3つのタイプがあります。STARTUPコントローラ:FlexRay
ネットワークの起動に使用されるコントローラです。STARTUPコントローラはFIBEXにリストアップ
され、INCAでは "STARTUP nn "(nnは起動情報の送信に使用されるスロットID)と付記さ
れます。FIBEXの記述例: <flexray:STARTUP-SYNC>60</flexray:STARTUP-
SYNC>SYNCコントローラ:ネットワーク内のコントローラの時間同期のために使用されるコント
ローラです。SYNCコントローラはFIBEXにリストアップされ、INCAでは "SYNC nn"(nnは同期
情報の送信に使用されるスロットID)と付記されます。STARTUPコントローラは、常にSYNCコ
ントローラでもあり、SYNCコントローラとして使用できます。FIBEXの記述例:
<flexray:SYNC>89</flexray:SYNC>.Integration(統合)コントローラ:上記以
外のコントローラで、これを使用してFlexRayモニタリングの構成設定を行います。INCAにおい
て、Integrationコントローラの名前にはインデックス(nn)は付加されません。FIBEXの記述
例: <flexray:NONE/>.該当するスロットの設定はAUTOSAR側で行えます。
INCA-FlexRay V7.4 | ユーザーガイド
4 INCA-FlexRayアドオンの使用方法 | 16
上記の情報に基づき、以下の手順でコントローラを選択し、ハードウェアの初期化を行います。
FlexRayハードウェアの構成と初期化を行う
1. ハードウェアデバイス リストからFLX:1 コントローラを選択します。
2. FLXパラメータ リストでFlexRayクラスタ フィールドの値(右側の列)をクリックしま
す。ここでもう一度クリックして、使用可能なクラスタのリストを開きます。
3. 目的のクラスタを選択します。
注記
バスディスクリプションファイルにクラスタが1 つしか含まれない場合、エントリは1 つしか表
示されません。
4. FLXパラメータ リストでFlexRayコントローラ フィールドの右側にあるフィールドをクリック
します。ここでもう一度クリックして、使用可能なコントローラのリストを開きます。
5. INCA-FlexRayハードウェアインターフェースの構成に使用するコントローラを選択しま
す。
6. 同じFLXパラメータ リストで STARTUP/SYNCコントローラ パラメータの値をクリック
します。ここでもう一度クリックして、STARTUP機能を持つ使用可能なコントローラのリス
トを開きます。
7. FlexRayの起動に使用するコントローラを選択します。
8. ハードウェア >ハードウェア初期化 を選択します。
実際に接続されているデバイスをハードウェアコンフィギュレーションエディタで作成されたデ
バイスに割り当てるための "接続されているデバイス" ダイアログボックスが開きます
9. デバイスを割り当てて、OK をクリックします。
4.2.2 FlexRayハードウェアの設定-XCP on FlexRayによる測定/適合
次に、FlexRayクラスタにXCPデバイスを追加します。
ここまでのステップにおいて、ハードウェアコンフィギュレーションエディタ内のハードウェアデバイスリス
トに組み込んだ FLX:1コントローラにバスディスクリプションをすでに割り当ててあるので、
FlexRayインターフェース経由のXCP を設定する際はこのステップは省略できます。しかし、ハー
ドウェアコンフィギュレーション内のFlexRay クラスタに最初に追加するデバイスがXCP デバイスで
ある場合は、「「FlexRayハードウェアの設定-FlexRayモニタリング」(ページ14)」に記述
れている方法でFLX コントローラにバスディスクリプションファイルを割り当て、コントローラの設定を
行う必要があります。
ハードウェア設定の簡略化のため、名前に "XCP" が含まれるコントローラが自動的にデバイスコ
ントローラとして選択されます。
FlexRayクラスタにXCPデバイスを追加する
1. ここでは、ハードウェアコンフィギュレーションエディタで、XCP on FlexRay(FlexRay 経
由のXCP)による測定/適合を行うためのハードウェアを追加し、ECUプロジェクト
(A2L)のディスクリプションを割り当てます。まず、ハードウェアデバイスリストからFlexRay
コントローラ FLX:1 を選択します。
2. デバイス >追加 を選択します。
INCA-FlexRay V7.4 | ユーザーガイド
4 INCA-FlexRayアドオンの使用方法 | 17
"ハードウェアデバイスの追加" ダイアログボックスが開きます。このときES512の "FLX"
フォルダがすでに展開された状態になっています。
3. XCP というエントリを選択します。
4. OK をクリックします。
ダイアログボックスが開き、ECUの記述を含むECUプロジェクト(A2Lファイル)を選択で
きます。
5. プロジェクト リストボックスでA2Lファイルを選択し、データセット リストボックスでデータセッ
トを選択します。
6. OK をクリックします。
同様に、FlexRayクラスタの一部である他のECU用のXCPデバイスを追加します。
注記
INCAでは、最大16個の「XCP on FlexRay」デバイスを使用できます。
FlexRayハードウェアを初期化する
1. ハードウェア >ハードウェア初期化 を選択します。
"接続されているデバイス" ダイアログボックスが開き、物理的に接続されているデバイスを
ハードウェアコンフィギュレーションエディタで作成したデバイスに割り当てることができます。
ハードウェアの初期化が完了すると、ハードウェアアイコンが から に変わります。
2. デバイスを割り当てて、OK をクリックします。
これでハードウェアコンフィギュレーションが完了したので、ハードウェアコンフィギュレーション
エディタを閉じることができます。クラスタ内に他のノードが存在すると、FlexRayインター
フェースはすぐにFlexRay通信を開始します。
INCA-FlexRay V7.4 | ユーザーガイド
4 INCA-FlexRayアドオンの使用方法 | 18
4.2.3 ハードウェアコンフィギュレーションエディタでSTARTUP/SYNCコントローラ
を選択する
STARTUP/SYNCコントローラを選択する
1. バスディスクリプションファイルが割り当てられているFlexRayコントローラを選択し、FLX
パラメータリストでFlexRay コントローラパラメータを選択します。
通信コントローラとのSTARTUP/SYNCコントローラとして使用するコントローラを選択し
ます。STARTUP/SYNC機能を持つコントローラであれば、どれでも選択できます。
STARTUP/SYNCコントローラを選択する必要があるのは、STARTUP/SYNCコントローラを2
つ以上含まないネットワークでINCAを使用する場合に限られます。
一部のハードウェアデバイス(ES595 FlexRayネットワークモジュールなど)は2つのスタートアッ
プコントローラを持っています。このようなデバイスを使用する場合は、オプションとして2番目の
STARTUP/SYNCコントローラを選択することができます。
4.3 実験をセットアップしてFlexRayモニタリングを開始する
INCA の実験環境では、バスディスクリプションファイルに定義されたすべてのシグナルを選択して
モニタすることができます。
実験をセットアップする
1. データベースマネージャで、FlexRayワークスペースを選択します。
2. 実験 リストボックス上部の 実験開始 ボタンをクリックして実験環境ウィンドウに実験を開
きます。
3. 実験に追加したい変数を選択して設定します。実験 ウィンドウで、変数 >変数の選択
を選択してください。
"変数の選択" ダイアログボックスが開きます。
4. ソース リストから FLX Monitoring A:1 を選択します。
上記の操作を行うと、変数リスト内に、選択したデバイスの全シグナルが測定変数として
アルファベット順に表示されます。その際に、表示されるべき変数が表示されなかったり、
変数がまったく表示されなかったりする場合があります。その場合は、フィルタが使用され
いないかを確認してください。すべてのフィルタをクリア ボタンをクリックすると、すべての
フィルタが無効になります。
INCA-FlexRay V7.4 | ユーザーガイド
4 INCA-FlexRayアドオンの使用方法 | 19
特定のファンクション用の変数についてのみ作業を行うには、ソース リスト内に表示されて
いるデバイス名の左端の +アイコンをクリックして、デバイスツリーを展開し、目的のファン
ションを選択します。すると、このファンクション用の変数のみが変数リストに表示されます。
バスディスクリプションの内容によっては、シグナルがファンクション以外のカテゴリ(フレー
ム、ECU、シグナルグループ)でグルーピングされている場合があります。(「フレーム、
ECU、シグナルグループを指定して変数を選択する」(ページ20))これらのケースをま
とめると、変数の選択方法には以下の3通りがあります。
FlexRayデバイスをクリックし、そのデバイスのシグナルの完全なリストから必要なシグナル
を選択します。
+アイコンをクリックしてFlexRayデバイスを展開し、下位の階層からファンクションを選択
してそのファンクション用の変数のサブセットから変数を選択します。
デバイスの場合もファンクションの場合も、デバイス階層を表す同じアイコンが ソース リス
のツリービューで使用されます。
FlexRayデバイスの前にある +アイコンをクリックしてツリー構造を展開し、さらにいずれ
のグループ(フレーム、ECU、シグナルグループ)を展開して目的のアイテムをクリックしま
す。そして選択したフレーム、ECU、またはシグナルグループに関連付けられたシグナルを
含むサブセットから目的の変数を選択できます。グループは、ソース リストのツリービューで
次のアイコンで表されます。
5. 変数リストから、監視したい変数をすべて選択します。
変数を選択すると、ダイアログの情報ペインに詳細情報が表示されます。
6. ソース リストから、ワークスペースに追加したXCPデバイスの1つを選択します。
7. 変数リストで、測定または適合を行いたいすべての変数を選択します。
8. OK をクリックして、選択された変数を実験ウィンドウに追加します。
9. 実験 >保存 を選択します。
"名前を付けて保存" ダイアログボックスが開きます。
10. データベースアイテム リストで Demo フォルダを選択して、実験をフォルダに追加します。
11. フィールドに Monitoring_Exp という名前を入力し、OK をクリックしま
す。
モニタリングと測定を開始する
1. 記録を行わずに表示を開始するには、<F11> を押します。
または
記録を開始するには <F12> を押します。
適合を開始する
1. ワーキングページがアクティブになっていることを確認します。
2. 通常どおりに適合作業を行います。
適合作業の実行についての詳細は、『INCAチュートリアル』を参照してください。
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5 ご使用上のヒント | 20
5 ご使用上のヒント
本章では、理解しにくい作業や、ちょっとした工夫で最適化できる作業を行う際に役立つヒントを
ご紹介します。
5.1 フレーム、ECU、シグナルグループを指定して変数を選択する
一般的に、INCAの実験環境での測定作業や適合作業に使用する変数を決定するには、"変
数の選択" ダイアログボックスにおいて、デバイスまたはそのデバイスのファンクションを選択し、変数
リストに表示された変数を選択します。
CANモニタリングデバイスの場合は、変数はCANフレームによってグループ化されるため、すべての
変数のリストから、または選択したCANフレームのみに属する変数のサブリストから変数を選択で
きます。
同じ原理に従って、FlexRayデバイスの変数は次のカテゴリのいずれかでグループ化することがで
きます。
フレームによるグループ化:
ソース リスト内でいずれかのフレームを選択すると、そのフレームに属するすべてのシグナル
が変数リストに表示されます。
注記
FIBEXファイルのディスクリプションの内容によっては、1つのシグナルが複数のフレームに
属する場合があります。
ECUによるグループ化:
ソース リスト内でいずれかのECUを選択すると、そのECUのすべての送信シグナル(つま
りそのECUが送信するシグナル)が変数リストに表示されます。
シグナルグループによるグループ化1) :
ソース リスト内でいずれかのシグナルグループを選択すると、そのシグナルグループに含ま
れるすべてのシグナルが変数リストに表示されます。
注記
上記のグルーピングは、車両メーカーから供給されるバスディスクリプションファイルにそれらのグ
ルーピングが定義されている場合にのみ有効です。FIBEXまたはAUTOSARファイルにこれら
のグループが含まれていない場合は、Sources ツリー内のFlexRayデバイスにはグループ用
の階層が表示されず、FlexRayデバイスに属する変数の選択は、全体のリストからしか行えま
せん。
"変数の選択" ダイアログボックスにおいて各グループは アイコンで示されます。
1) ここでの「シグナルグループ」は、FIBEXファイルに <requirements> セクションで定義されたシ
グナルグループを指します。FIBEXの仕様では、1つのシグナルグループ内のシグナルはすべて1つ
のフレームに含まれている必要があります。
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ETAS INCA-FLEXRAY ユーザーマニュアル

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ユーザーマニュアル