ETAS INCA-EIP ユーザーガイド

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ETAS INCA-EIP V7.4
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INCA-EIP V7.4 - ユーザーガイド R03 JP - 06.2023
ETAS Content
Content
1 はじめに 5
1.1 製品の正しい使用法 5
1.2 対象ユーザー 5
1.3 安全に関する注意事項の書式 5
1.4 本製品使用時の安全に関する注意事項 6
1.5 個人情報保護に関する注意事項 7
2 INCA-EIPとは 8
3 製品のインストール 9
3.1 インストールの準備 9
3.1.1 パッケージの内容 9
3.1.2 INCA-EIPのライセンス 9
3.1.3 システム要件 9
3.1.4 インストールに必要なユーザー特権 9
3.2 INCA-EIPのインストール 9
3.3 ソフトウェアのライセンス管理 11
4 ハードウェアの設定 13
4.1 システム構成 13
4.1.1 ES830ベースのラピッドプロトタイピングシステム 13
4.1.2 ES910 ラピッドプロトタイピングシステム 13
4.1.3 PCベースの仮想プロトタイピングシステム 14
4.1.4 仮想プロトタイピングとラピッドプロトタイピングとの違い 15
4.2 ラピッドプロトタイピングシステム用IPアドレスの扱い 15
4.3 ハードウェアのパラメータ設定 16
4.3.1 プロトタイピングターゲットの組み込み 16
4.3.2 E-Targetの設定 17
4.3.3 ロックされたRTIOドライバのリセット 22
5 E-Target(実験ターゲット)を使用した実験 24
5.1 E-Targetの選択 24
5.2 実験の設定 24
5.2.1 適合変数の測定を有効にする 24
5.2.2 MC/RPのラスタアクセスを管理する 25
5.2.3 カーブ/マップの軸ポイント数を変更する 25
INCA-EIP V7.4 - ユーザーガイド 3
ETAS Content
5.2.4 オフライン実験を行う 25
5.3 E-Targetのメモリページ 26
5.4 プログラム実行の制御 26
5.4.1 プログラムのオートスタート 27
5.4.2 プログラムのマニュアル制御 27
5.4.3 マニュアル操作による測定変数の再初期化 28
5.4.4 プログラムエラーの表示 28
5.5 E-Targetシステム上のデータセットの管理 28
5.6 Non-Volatile変数(アダプティブ適合変数)の使用 30
6 外部インターフェース 31
6.1 ASCETとのデータ交換 31
6.2 ASAM-MCD-3MCインターフェース 32
7 お問い合わせ先 33
INCA-EIP V7.4 - ユーザーガイド 4
1 はじめに | 5
1 はじめに
本ユーザーガイドでは、ソフトウェア開発における実験環境としてINCAとINCA-EIPアドオンを使
用する際に必要な情報を提供するものです。
INCA-EIPアドオンパッケージのインストール方法やハードウェア構成の注意点、さらにINCAの
実験にラピッドプロトタイピングシステムや仮想プロトタイピングシステムを使用する際の注意点な
どを解説しています。
INCA-EIPの機能や用途については、「INCA-EIPとは」(ページ8)を参照してください。
1.1 製品の正しい使用法
INCAとINCAアドオンは、自動車への応用を前提に開発されたものであり、それらのユーザード
キュメントに記述された範囲でのみ使用することができます。
INCAとINCAアドオンは、工業用実験室や試験用車両での使用を想定しています。
INCA-EIPアドオンパッケージ(実験ターゲット統合パッケージ)は、INCAの測定/適合機能
をリアルタイムソフトウェアシステムの開発用実験環境として活用するためのINCAアドオン製品で
す。これにより、E-Target(Experimental Target)と呼ばれる実験ハードウェアへのアクセ
スが可能になります。
ETAS GmbHは、誤った使い方や安全情報を守らないことによって生じた損害については責任
を負いかねます。
1.2 対象ユーザー
本ソフトウェア製品および本ユーザーガイドは、自動車用ECUの開発・適合に携わる有資格者
や、ソフトウェアをインストール・保守・アンインストールするシステム管理者または管理者権限の
あるユーザーを対象としています。本書の内容をご理解いただくには、計測とECUに関する技術
的な専門知識が必要です。
1.3 安全に関する注意事項の書式
安全に関する注意事項には、人身事故や物的損害を防ぐための重要な情報が記載されてお
り、その指示に従わなかったために生じる可能性のある障害の深刻度に応じて以下の書式が使
用されています。
危険
危険:記載事項を守らないと死亡または重傷のリスクが高い危険性について説明していま
す。
警告
警告:記載事項を守らないと死亡または重傷のリスクを招く可能性のある危険性について説
明しています。
INCA-EIP V7.4 - ユーザーガイド
1 はじめに | 6
注意
注意:記載事項を守らないと軽~中程度の負傷のリスクを招く可能性のある危険性につい
て説明しています。
ご注意ください!
ご注意ください!:記載事項を守らないと物的損害を招く可能性のある状況について説明
しています。
1.4 本製品使用時の安全に関する注意事項
INCAとINCAアドオンを用いた作業を行う際には、以下の安全情報を遵守してください。
警告
予期しない車両の挙動を招く危険があります。
適合操作は、ECU、およびECUに接続されたシステムの挙動に影響を与えます。
その結果、エンジンが停止したり、予期せぬ車両の挙動(ブレーキング、加速、操舵など)が
発生する可能性があります。
適合操作は、製品の使用に関する講習を受け、接続されたシステムの起こり得る反応を評
価できる方のみが実施してください。
警告
予期しない車両の挙動を招く危険があります。
CAN、LIN、FlexRay、イーサネットなどのバスシステムでメッセージを送信すると、接続された
システムの動作に影響を与えます。
その結果、エンジンが停止したり、予期せぬ車両の挙動(ブレーキング、加速、操舵など)が
発生する可能性があります。
バスシステム経由のメッセージ送信は、各バスシステムの使用に関する十分な知識があり、接
続されたシステムの起こり得る反応を評価できる方のみが実施してください。
「ETAS Safety Advice - 安全上のご注意」の指示、およびオンラインヘルプとユーザーガイドに
記載されている安全情報を遵守してください。
この情報は、INCAの ヘルプ メニューから安全上のご注意 を選択して開くことができます。
INCA-EIP V7.4 - ユーザーガイド
1 はじめに | 7
1.5 個人情報保護に関する注意事項
本製品の使用時には個人データが処理されます。本製品の購入者は、GDPR(General
Data Protection Regulation:EUの一般データ保護規則)のArt. 4 No.7に従って、これ
らの処理の法的適合性を確保する責任があります。製造者であるETASは、当該データの不適
切な扱いに関して、いかなる場合も責任を負いません。
詳細については、INCAオンラインヘルプを参照してください。
INCA-EIP V7.4 - ユーザーガイド
2 INCA-EIPとは | 8
2 INCA-EIPとは
INCA-EIPアドオンパッケージ(実験ターゲット統合パッケージ)は、INCAの測定/適合機能
をリアルタイムソフトウェアシステムの開発用実験環境として活用するためのINCAアドオン製品で
す。これにより、E-Target(Experimental Target)と呼ばれる実験ハードウェアへのアクセ
スが可能になります。E-Targetには、ES910コンパクトラピッドプロトタイピングモジュールや
ES830ベースのシステムなどがあります。これらのハードウェアを用いて、設計中のソフトウェアのラ
ンタイム挙動をテストすることができます。さらに、INTECRIOで生成されたプロトタイプをPC上で
実験することもでき、その環境においては時間スケールを変更することも可能です。
INCA-EIPを使用してINCAを開発環境に組み込むことにより、INCAの優れた計測/適合機
能をソフトウェアの機能検証に活用できます。測定データを保存してINCAの付属ツールで分析
することもでき、INCAとASCET間でデータセットの交換を行うことも可能です。また、
INTECRIOで生成された仮想プロトタイピングモデルを使用して、「仮想ハードウェア」による
定と適合を行うこともできます。
このアドオンパッケージは、INCAをラピッドプロトタイピングや仮想プロトタイピング環境で使用す
際に必要となるものです。ECUハードウェアを使用して、INCAで計測/適合のみを行う際に
は、このパッケージをインストールする必要はありません。
INCA-EIP V7.4 - ユーザーガイド
3 製品のインストール | 9
3 製品のインストール
INCA-EIPは、ETASの測定・適合システム「INCA」のアドオンパッケージです。本製品をインス
トールする際は、対応するバージョンのINCAがあらかじめPCにインストールされている必要があり
ます。
3.1 インストールの準備
インストールを行う前に、製品パッケージに含まれるすべてのアイテムが揃っていること、また使用
するPCがシステム要件を満たしていることを確認してください。オペレーティングシステムやネット
ワーク環境によっては、特定のユーザー特権が必要な場合もあります。
3.1.1 パッケージの内容
INCA-EIPの製品パッケージには、以下のものが含まれています。
INCA-EIPのインストールプログラム
仮想プロトタイピング用RTAツール
ハードウェアサービスパック(HSP)
INCA-EIPのドキュメント
3.1.2 INCA-EIPのライセンス
INCA-EIPを使用するには、ライセンス契約に基づいて発行されたライセンスファイルが必要
す。ライセンス管理に使用されるライセンスファイルは、社内のツール管理者の方から、または
ETASホームページのセルフサービスポータルサイト
http://www.etas.com/support/licensing)から入手できます。ライセンスファイルのお
申し込み時には、受注プロセスにおいてETASから発行された「アクティベーション番号」が必要で
す。
ライセンスについては「ソフトウェアのライセンス管理」(ページ11)を参照してください。
INCA-EIPとINCA-SIPのライセンスキーは、1つのライセンスキーに統合されています。これら2
つのアドオンはそれぞれ個別のプログラムとしてインストールされますが、同一のライセンスキーを使
用します。
3.1.3 システム要件
システム要件は、INCA-EIPのリリースノートに記載されています。
3.1.4 インストールに必要なユーザー特権
INCA-EIPをPCにインストールするには、管理者のユーザー特権が必要です。詳しくは、シス
ム管理者の方にお問い合わせください。
3.2 INCA-EIPのインストール
INCA-EIPは、DVDからでもネットワークドライブからでもインストールすることができ、どちらの場
合も同じダイアログボックスによりインストールが実行されます。
INCA-EIPをインストールするには管理者の権限が必要です。
INCA-EIP V7.4 - ユーザーガイド
3 製品のインストール | 10
注記
INCA-EIPをインストールする前に、INCAがすでにPCにインストールされており
INCAインストールのリリース番号がINCA-EIPアドオンパッケージのリリース番号と互
換性があることを確認してください。
INCAインストールパッケージ(サービスパック)をダウンロードする
1. ETASホームページで、ダウンロードセンター を開きます。
2. アイテムリストのヘッダ行にある3つのドロップダウンリストで、INCA >INCA V7.4 >
フトウェア を選択します。
3. INCAサービスパックのリンクをクリックし、画面の指示に従ってサービスパック(*.zip)を
ダウンロードします。
4. Windowsエクスプローラで、ダウンロードしたZIPファイルを選択して右クリックし、ショート
カットメニューから プロパティ を選択します。
5. 全般 タブで、セキュリティ: グループの ブロックの解除 チェックボックスをオンにします。
6. ZIPファイルを解凍して、フォルダ構造を完全に展開します。
注記
インストールされるすべてのコンポーネントの完全なファイル名とディレクトリ名は制限さ
れていて、所定の文字数以下にする必要があり、その文字数は個別に計算されま
す。
ダウンロードしたサービスパックは、インストーラプログラムSetup_
ServicePack.exeのパスが80文字を超えないような場所に置いてください。
インストールパッケージのフォルダ構成やフォルダ名、ファイル名は、変更しないでくださ
い。
インストールを行う
1. PC上で実行されているETASのソフトウェアをすべて終了します。
注記
他のソフトウェア(オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムなど)の更新と
並行してINCAのインストールを行うことはできません。他の更新処理がすでに実行さ
れている場合は、その終了を待ち、PCを再起動してからINCAのインストールを行って
ください。
2. サービスパックのルートにあるSetup_ServicePack.exeを起動します。
"サービスパックインストーラ" ウィンドウが開きます。
3. インストール 列で、インストールするソフトウェア製品とアドオンを選択します。
グループの最上位のアイテムを選択すると、下位のアイテムがすべて選択されます。
4. "End User License Agreement" (ソフトウェア使用許諾契約)を読み、合意しま
した というチェックボックスをオンにします。
INCA-EIP V7.4 - ユーザーガイド
3 製品のインストール | 11
5. セットアップ用言語を選択します。
注記
ここで選択した言語は、サービスパックインストーラだけでなく、インストール済み、または
今後インストールされるINCAとそのアドオンにも適用されます。
6. 設定内容を確認し、インストール をクリックします。
インストールが開始され、ステータス列に各ソフトウェアの処理状況が表示されます。
7. 終了したら、再起動のオプション ボタンをクリックします。
"再起動" ダイアログボックスが開きます。
注記
インストールの終了後は、システムを再起動することをお勧めします。
一部のソフトウェアは、インストール処理の途中で再起動が必要になる場合がありま
す。その場合はステータス列に警告アイコン が表示され、PCの再起動後に処理が
続行されます。
8. 再起動のオプションを選択します。
9. OK をクリックします。
サービスパックインストーラは、指定されたソフトウェアを自動的にサイレントモードでインストールす
るので、個別のインストールウィンドウなどは開きません。
PCベースの仮想プロトタイピングを行うには、VP実験用ハードウェアをシミュレートする仮想OS実
行プラットフォームをインストールする必要があります。これはINTECRIOの製品パッケージに含ま
れます。
INCA-EIPのライセンスをインストールする
INCA-EIPはINCAと同様にライセンス管理の対象となる製品です。INCA-EIPを使用するに
は、インストール先のPC専用のライセンスファイルが必要です。このファイルがないと、INCA-EIP
のインストールは行えますが、使用することはできません。
ライセンスについては「ソフトウェアのライセンス管理」(下記)を参照してください。
3.3 ソフトウェアのライセンス管理
INCAを使用するには、有効なライセンスが必要です。ライセンス管理に使用されるライセンスファ
イルは、社内のツール管理者の方から、またはETASホームページのセルフサービスポータルサイト
http://www.etas.com/support/licensing)から入手できます。ライセンスファイルのお
申し込み時には、受注プロセスにおいてETASから発行された「アクティベーション番号」が必要で
す。
Windowsスタートメニューから以下を選択し、ETASライセンスマネージャを開きます。
E>ETAS >ETAS License Manager
INCA-EIP V7.4 - ユーザーガイド
3 製品のインストール | 12
ライセンス管理に関する操作は、ライセンスマネージャの画面に従って行ってください。ETASのラ
イセンスモデルについての説明や、ライセンスマネージャの操作方法(ライセンスの確認、登録/
削除、借用/返却など)については、ライセンスマネージャのオンラインヘルプ(F1)を参照して
ください。
INCA-EIP V7.4 - ユーザーガイド
4 ハードウェアの設定 | 13
4 ハードウェアの設定
本章では、ハードウェアの構成や、INCAにおけるパラメータ設定について説明します。
4.1 システム構成
E-Target(実験ターゲット)として使用できるデバイスには、ES830 ラピッドプロトタイピングモ
ジュールとES910 コンパクトラピッドプロトタイピングモジュールがあります。さらに、INTECRIOで
生成された仮想プロトタイピングモデルをPC上で実行することも可能です。
4.1.1 ES830ベースのラピッドプロトタイピングシステム
ラピッドプロトタイピングモジュールES830は、バイパスによるファンクション開発やバスへのダイレク
トアクセスに利用できます。ES830ラピッドプロトタイピングモジュールをE-Targetとして使用する
と、ECUの制御機能のラピッドプロトタイピングと、FETKまたはXETKを用いたECUの測定・適
合や、CANインターフェースを用いたCANモニタリングを並行して行うことができます
FETK/XETKアクセスによる計測/適合を行う場合は、INCAのハードウェアコンフィギュレー
ションに "ES830/Simulation Controller" に加えて、FETKまたはXETKコントローラを追加
する必要があります。
CAN、CAN FD、FlexRayのモニタリングを行う場合は、"ES830/Simulation Controller"
に加えて、対応するバスインターフェースとそのモニタリングデバイスをINCAのハードウェアコンフィ
ギュレーションに追加する必要があります。
INCAで同時に使用できるES830モジュールの数は、1台のみです。
4.1.2 ES910 ラピッドプロトタイピングシステム
ES910コンパクトラピッドプロトタイピングモジュールをE-Targetとして使用すると、ECUの制御
機能のラピッドプロトタイピングと、ETKを用いたECUの計測/適合や、CANインターフェースを
用いたCANモニタリングを並行して行うことができます。
さらに、ES930マルチI/OモジュールをES910に接続し、このモジュールが出力するモデル信号を
測定することができます。
INCA-EIP V7.4 - ユーザーガイド
4 ハードウェアの設定 | 14
このES930自体は、ハードウェアコンフィギュレーションエディタには表示されず、プロトタイピングに
関する設定項目もありません。
ETKアクセスによる計測/適合を行う場合は、"ES910/Simulation Controller" と
"ETKC"(ETKコントローラ)をINCAのハードウェアコンフィギュレーションに追加する必要があり
ます。
CANモニタリングを行う場合は、"ES910/Simulation Controller" と、CANモニタリングデバ
イスを含むCANインターフェースをINCAのハードウェアコンフィギュレーションに追加する必要があり
ます。
ETKアクセスとCANモニタリングは、INCAの基本プログラムのみで実行できます。INCA-EIPアド
オンが必要となるのは、ES910システムを使用してラピッドプロトタイピングを行う場合のみです。
4.1.3 PCベースの仮想プロトタイピングシステム
PCをE-Targetとして使用し、INTECRIOで生成された仮想プロトタイピングモデルを実行する
と、INCAから仮想ハードウェアの測定と適合を直接行うことができます。
注記
仮想ハードウェアは、INCA上では他のE-Targetと同様に扱われます。PC上の仮想ハー
ウェアを使用するには、仮想実行プラットフォームをPCに別途インストールする必要があります
またINCA-EIPで仮想ハードウェアを使用する際には、INTECRIOで使用する場合と同様の
条件が適用されます。詳しい情報はINTECRIOのドキュメントを参照してください。
INCA-EIP V7.4 - ユーザーガイド
4 ハードウェアの設定 | 15
4.1.4 仮想プロトタイピングとラピッドプロトタイピングとの違い
仮想プロトタイピング(VP:Virtual Prototyping)とラピッドプロトタイピング(RP:Rapid
Prototyping)の主な違いを以下の表でまとめます。
仮想プロトタイピング(VP) ラピッドプロトタイピング(RP)
リアルタイムではありません。 厳格なリアルタイム要件を満たすことができ
ます。
可能な限り高速に、または指定のタイムス
ケールに従って実行されます。
実世界とのインタラクションを行います。
以下のような実世界とは接続されません。
I/Oデバイス
通信バス
以下のような周辺機器に幅広く対応しま
す。
アナログ/デジタルI/Oデバイス
通信バス
スティミュラスまたはプラントモデルが必要で
す。
リアルタイムなプロトタイピングとバイパスア
プリケーションに用いられます。
開発工程内の早期段階における
Windows® PC上での机上評価や事
前適合に利用されます。
テストベンチや路上での評価や適合に利
用されます。
VP-ECU.exeはNVRAM(Non-Volatile RAM:不揮発性RAM)の機能を含まないた
め、VP-ECUの実行中にNVRAM変数の値が変化しても、その内容は保存されません。その結
果、次回の起動時にはコーディングされた初期値が使用されます。初期値と異なる値が含まれ
るデータセットを使用するには、INCA-EIPユーザーオプションの"E-Target" タブで、"データセッ
トへ自動的にアップロード" オプションを "No" に設定してください。
4.2 ラピッドプロトタイピングシステム用IPアドレスの扱い
ES891とFETKを使用したライピッドプロトタイピングシステムでは、ハードウェア接続に「IPヘル
パーツール」が使用されます。IPヘルパーツールは、接続の初期化時に自動的に起動します。こ
のツールはES891に適したIPアドレスを受け取り、ETAS IPマネージャのインターフェースを使用
してハードウェアにセットします。ラピッドプロトタイピングシステムを正しく構成するためのIP設定
は、ワンクリックで完了します。ハードウェアシステムには静的IPアドレスが割り当てられ、自動的に
再起動が行われます。
注記
IPヘルパーツールは、INTECRIO V 4.7.3以前のバージョンで作成されたラピッドプロトタイ
ングプロジェクトにのみ表示されます。V 4.7.3より後にリリースされたINTECRIOで作成された
ラピッドプロトタイピングプロジェクトには表示されません。
INCA-EIP V7.4 - ユーザーガイド
4 ハードウェアの設定 | 16
4.3 ハードウェアのパラメータ設定
INCA-EIPを使用するには、まずはINCAのデータベースブラウザで通常どおりに実験準備を行
います。実験プロジェクトを関連するASAM-2MCファイルと共にINCAデータベースにインポート
し、ワークうスペースを作成します。
ASCET-RPまたはINTECRIOで作成されたプロジェクトをインポートする場合は、通常と同じよ
うにプロジェクトのHEXファイルを選択することはできません。HEXファイルの代わりにコードファイル
(拡張子*.a2l.cod、例:system.a2l.cod)が使用され、A2Lファイルと同じベース
ファイル名のファイルが見つかった場合は自動的にINCAデータベースにロードされます
ハードウェアコンフィギュレーションエディタでE-Targetハードウェアを選択し、対応するプロジェクト
を割り当て、パラメータを設定します。
ハードウェアコンフィギュレーションエディタでの設定手順は、使用するハードウェア、つまりPCのイー
サネットポートにどのデバイス(ES830、ES910)を接続するか、またはPCを仮想プロトタイピン
グ用に使用するかどうか、などに依存します。以下に、それぞれの方法を説明します。
注記
1つのハードウェアコンフィギュレーション内で使用できるE-Targetの最大数は4つです。
注記
INCAには、INCA-EIPでの作業を開始する前に設定しておくことができるE-Target用ユー
ザーオプションが用意されています。詳しくはINCA-EIPオンラインヘルプを参照してください。
4.3.1 プロトタイピングターゲットの組み込み
以下のいずれかの方法でプロトタイピングターゲットを組み込むことができます。
E-Targetを組み込む(ES830またはES910をPCに直接接続する)
仮想プロトタイピング用PCを組み込む
E-Targetを組み込む
1. INCAハードウェアコンフィギュレーションエディタで、デバイス >追加 メニューを選択しま
す。
2. "ハードウェアデバイスの追加" ダイアログボックスが開きます。
3. "使用可能なハードウェアデバイス" リスト内の以下のいずれかのシステムをダブルクリック
ます。
lES830
lES910/Simulation System
lES910.3
4. 目的のサブエントリを選択します。
5. OK ボタンをクリックして、このデバイスをハードウェアコンフィギュレーションに追加します。
"<デバイス名> のプロジェクトとワーキングデータを選択" というタイトルのダイアログボック
スが開きます。
6. "プロジェクト" リストボックスから、実験に使用するECUプロジェクトを選択します。
INCA-EIP V7.4 - ユーザーガイド
4 ハードウェアの設定 | 17
すでにデータセットを作成している場合やデータセットをインポートしている場合を除き、こ
の時点ではデータベースにはプロジェクト用データセットが存在していません。
7. OK ボタンをクリックしてプロジェクトをE-Targetに割り当てます。
注記
ES830またはES910をE-Targetとして使用する場合、ラピッドプロトタイピングと計測/適
合を並行して行うには、ES830/ES910システムにシミュレーションコントローラとETKコント
ローラの2つのデバイスを追加する必要があります。ES830またはES910モジュールでさらに
CANモニタリングを行う場合は、CANインターフェースとCANモニタリングデバイスをES830また
はES910システムの下に追加する必要があります。またES910モジュールにES921 CANモ
ジュールを組み込んでそのCANポートを使用するには、ES910システムの下にES921モ
ジュールを追加してください。同様に、ES8xxデバイスの各インターフェースをモニタリングに使用
するには、対応するデバイスをハードウェアコンフィグレーションに追加してください。
仮想プロトタイピング用PCハードウェアを組み込む
1. INCAハードウェアコンフィギュレーションエディタで、デバイス >追加 メニューを選択しま
す。
2. "ハードウェアデバイスの追加" ダイアログボックスが開きます。
3. "使用可能なハードウェアデバイス" リスト内のエントリ PC/Simulation System
ダブルクリックして、サブエントリを表示します。次に、エントリ Virtual Prototyping
をダブルクリックします。
4. サブエントリの X86 PC Controller を選択します。
5. OK ボタンをクリックして、このデバイスをハードウェアコンフィギュレーションに追加します。
"<デバイス名>のプロジェクトとワーキングデータを選択" というタイトルのダイアログボック
スが開きます。
6. "プロジェクト" リストボックスから、実験に使用するECUプロジェクトを選択します。
すでにデータセットを作成している場合やデータセットをインポートしている場合を除き、こ
の時点ではデータベースにはプロジェクト用データセットが存在していません。
7. OK ボタンをクリックしてプロジェクトをE-Targetに割り当てます。
8. 空のワーキングデータセットが作成されてE-Targetに割り当てられ、そのE-Target
ハードウェアコンフィギュレーションに追加されます。
4.3.2 E-Targetの設定
E-Targetをハードウェアコンフィギュレーションに追加した後は、ハードウェアコンフィギュレーション
エディタを使用してパラメータを設定します。システム用パラメータとデバイス(シミュレーションコン
トローラ)用パラメータを設定します。詳細については、以下を参照してください。
E-Targetを設定する
1. ハードウェアコンフィギュレーションエディタの "1ハードウェアデバイス" リストボックスからE-
Targetを選択します。
または
INCA-EIP V7.4 - ユーザーガイド
4 ハードウェアの設定 | 18
PCベースの仮想プロトタイピングを行う場合は仮想プロトタイピングシステムVirtual
Prototypingを選択します。
"パラメータ" タブに、設定可能なパラメータとその現在の設定値が表示されます。
2. 各パラメータの "値" 列のフィールドをダブルクリックすると、設定値を変更することができま
す。
3. 設定値を変更するには、テキストフィールドに直接キー入力するか、またはドロップダウンリ
ストから値を選択します。
4. すべての値について同じ手順を繰り返し、実験のオプションを設定します。
5. 適用 ボタンをクリックして、変更した内容を保存します。
または
リセット ボタンをクリックすると、変更内容は取り消され、各パラメータの値は最後に保存
された値に戻ります。
以下に、イーサネット接続に関するシステムパラメータとその設定値について説明します。また各
項目のデフォルト値を[ ]で囲んで示します。
名前
[ES830:<n>]
[ES910/SimulationSystem:<n>]
[Virtual Prototyping]
リンクシステム名を任意にテキスト入力します。
シリアルNo.
[(未設定)]
システムのシリアル番号を入力します。ハードウェア初期化時には、実際に接続された
ハードウェアモジュールのシリアル番号が読み取られますが、必要に応じて変更することが
できます。
注記
仮想プロトタイピング用PCを使用する場合、シリアル番号はサーバーアプリケーション
ら提供され、この番号を編集することはできません。
エイリアス名
[(未設定)]
INCA-EIP V7.4 - ユーザーガイド
4 ハードウェアの設定 | 19
システムのエイリアス名(別名)を入力します。
ファームウェアバージョン
ハードウェアのファームウェアバージョンが表示されます。この情報は、オンラインでのファーム
ウェアチェックが実行されていない場合は表示されません。
INCAハードウェアの通信ポート
[イーサネット]
E-Targetとの通信にはイーサネットポートが使用されます。
シミュレーションコントローラデバイスのパラメータを設定する
1. ハードウェアコンフィギュレーションエディタの "1 ハードウェアデバイス" リストボックスから、シ
ミュレーションコントローラを選択します。
"パラメータ" タブに、設定可能なパラメータとその現在の設定値が表示されます。
2. 各パラメータの "値" 列のフィールドをダブルクリックすると、設定値を変更することができま
す。
設定値を変更するには、テキストフィールドに直接キー入力するか、またはドロップダウンリ
ストから値を選択します。
3. すべての値について同じ手順を繰り返し、実験のオプションを設定します。
4. 適用 ボタンをクリックして、変更した内容を保存します。
または
リセット ボタンをクリックすると、変更内容は取り消され、各パラメータの値は最後に保存
された値に戻ります。
以下に、ES910デバイスまたはX86 PC Controllerのパラメータとその設定値について説明し
ます。これらのデバイスは、同じ設定オプションを提供します。また各項目のデフォルト値を[ ]で囲
んで示します。
名前
[ES830/Simulation Controller:<n>]
[ES910/SimulationController:<n>]
[X86 PC Controller:<n>]
INCA-EIP V7.4 - ユーザーガイド
4 ハードウェアの設定 | 20
デバイス名は任意に変更できます。この名前は、変数名に付加されるデバイス名として使
用されます。
測定エラー時の処理
[測定終了]
測定中にINCAとハードウェアモジュールとの接続が切断された場合に、システムがどのよ
うに対処すればよいかを指定します。デフォルトの "測定終了" ではエラー発生時に測定
が終了します。また、データ読み込み時にエラーが発生した場合にのみリトライを行う場合
は "測定開始時のエラーは測定終了、測定時のエラーはリトライ" を選択し、どのような
エラーが発生しても必ずリトライを行うには "常にリトライ" を選択します。
初期化後オートスタート
[No]
プログラムがダウンロードされハードウェア初期化が完了した後、すぐにプログラムが自動的
に実行されるようにするか(Yes)、あるいは実験環境からマニュアル操作で開始するか
No)を指定します。プログラムのオートスタート(自動起動)が行われるのは、プログ
ラムがフラッシュメモリに格納されていなかった場合、または異なるバージョンが格納されて
いた場合のみです。
このオプションと次のオプションをNoに設定しておくと、実験中に通信が切断された場合、
再接続を行って実験を再開する際に実験がリセットされるのを防ぐことができます。
注記
リファレンスページとワーキングページを使用するモデルの場合、デバイスの初期化時に2
つのデータセット間に相違が検知されると、自動的にメモリページマネージャが開きま
す。
データセットへ自動的にアップロード
[Yes]
コードファイル内に定義された初期値を使用して、INCAデータセット内に自動的に生成
された空の初期データセットを上書きします。コードファイルの値は、実験が開始された直
後に書き込まれます。
WPフラッシュ後の自動フリーズ
[YesNo]
INCAが、ワーキングページのフラッシュ書き込み後に、データセットの自動フリーズを実行
するかどうかを指定します。
INCA-EIP V7.4 - ユーザーガイド
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ETAS INCA-EIP ユーザーガイド

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