特に明記がない限り、手順は
15
~
30
℃で行ってください。
1. DNAの沈殿
中間相の上に残っている水相を除去し、DNAを中間相およびフェノール-クロロホルム相からエタノ
ールで沈殿させます。使用した TRIZOL®試薬1mlにつき100%エタノール0.3mlを加え、転倒混和
にてサンプルを混合してください。次にサンプルを15~30℃で2~3分間インキュベートし、2~8℃
で5分間、2000gで遠心し、DNAを沈殿させてください。
水相を注意深く除去することが、
DNA
の精製度に重要です。
2. DNAの洗浄
フェノール、エタノール含有の上清を除去します。タンパク質を抽出する場合は、この上清は保存し
てください。10%エタノールに0.1Mクエン酸ナトリウムを加えた溶液でDNAペレットを2回洗浄しま
す。使用したTRIZOL®試薬1mlあたり1mlの溶液で洗浄してください。各洗浄ステップでは、DNAペ
レットを15~30℃で30分間洗浄液でインキュベートし(時々撹拌してください)、2~8℃で5分間、
2000gで遠心してください。2回洗浄した後、DNAペレットを75%エタノール(1mlのTRIZOL®試薬あ
たり75%エタノール1.5-2ml)で懸濁し、15~30℃で10~20分インキュベートし(時々撹拌してくださ
い)、2~8℃で5分間2000gで遠心してください。
200µg
以上の
DNA
または大量の
DNA
以外の産物を含むサンプルを処理する場合は、
0.1M
クエン
酸ナトリウム
/10 %
エタノール溶液での洗浄ステップをさらに追加してください。
3. DNAの再溶解
チューブの蓋を開け、5~15分間風燥させてください。(遠心分離下では乾燥させないでください。
溶解がより困難になる場合があります。)。DNA濃度が0.2-0.3µg/µlになるように、DNAを8mM
NaOH溶液に溶解してください。通常、107個の細胞、または50~70mgの組織から抽出したDNA
に300~600µlの8mM NaOH溶液溶液を加えます。単離されたDNAは、水あるいはTrisバッファー
では再懸濁が難しいため、弱アルカリ性のバッファーで再懸濁することを推奨します。8mM NaOH
溶液のpHは9以下のため、DNA溶解後は、TEバッファーまたはHEPESで容易に調節することが
できます。この段階では、DNA溶液(特に組織からの溶液)は不溶性のゲル状物質(膜の断片等)
を含むことがあります。この場合、12000g以上で10分間遠心し、不溶性物質を除去してください。
遠心後、新しいチューブにDNAを含む上清を移してください。8mM NaOH溶液で可溶化したDNA
は、4℃で一晩保存可能です。長期保存については、サンプルがpH 7-8(表参照)になるまで
HEPESで調節し、1mM EDTAを加えてください。pH調節後は、DNAは4℃または-20℃で保存可
能です。
DNAの定量および予想される収量
8mM NaOH溶液に溶解したDNA溶液を一定量取り、水と混合した後、A260の吸光度を測定してくださ
い。2本鎖DNAについては、A260値を使用してDNA含量を計算してください。A260の1ユニットは2本鎖
DNA50µg/mlに相当します。ヒト、ラット、マウス由来の2倍体細胞1×106個あたりのDNA量はそれぞれ
7.1µg、6.5µg、5.8µgになります(3)。サンプルに使用した細胞数は、この値を基に算出してください。
アプリケーション:
PCR
による
DNA
の増幅:
DNAを8mM NaOH溶液に溶解後、0.1M HEPESでpHを8.4に調製してください(表参照)。DNAサンプ
ル0.1~1.0µgをPCR反応に加え、通常のPCRプロトコールを行ってください。
制限酵素反応:
DNA溶液のpHをHEPESを使用し、目的の値に調整してください(表参照)。または1mM EDTA(pH 7~
pH8.0)溶液中でサンプルを透析することも可能です。1.0µgのDNAあたり3~5ユニットの酵素を使用し
てください。それぞれの酵素についてメーカーが推奨する条件で3~24時間反応させてください。通常の
反応で、DNAの80~90%が消化されます。
8mM NaOH
溶液で溶解した
DNA
サンプルの
pH
調整
1mlの8mM NaOH溶液について、以下の量の0.1Mあるいは1MのHEPESを使用します。
Final pH 0.1 M HEPES (µl) Final pH 1 M HEPES (µl)
8.4
86 7.2 23
8.2
93 7.0 32
8.0
101
7.8
117
7.5
159
DNA抽出の注意点:
1. フェノール-クロロホルム相、中間相は、2~8℃で一晩保存可能です。
2. 75%エタノールに溶解したサンプルは、2~8℃で数ヶ月間保存可能です。
3. 8mM NaOH溶液に溶解したサンプルは、2~8℃で一晩保存可能です。長期保存については、pH
を7~8に調整し、EDTAの濃度を1mMに調整してください。
タンパク質の分離方法:
タンパク質は、エタノールによるDNAの沈殿(DNAの沈殿、ステップ1)後に得られるフェノール、エタノー
ル含有の上清から分離します。得られるサンプルは、ウエスタンブロット法による解析が可能です(2)。
必要な試薬:
• イソプロピルアルコール
• 0.3 M 塩酸グアニジン/95% エタノール
• エタノール
• 1% SDS溶液
1. タンパク質の沈殿
イソプロピルアルコールでフェノール、エタノール含有の上清よりタンパク質を沈殿させます(上清
は使用したTRIZOL®試薬1mlあたり約0.8mlの量になります)。使用したTRIZOL®試薬1mlあたりイ
ソプロパノール1.5 mlを加えます。サンプルを15~30℃で10分間インキュベートし、2~8℃で10分
間、12000gでタンパク質を沈殿させます。
2. タンパク質の洗浄
上清を除去し、0.3M塩酸グアニジンを含む95%エタノール溶液でペレットを3回洗浄してください。
使用したTRIZOL®試薬1mlあたり洗浄液2mlを加えてください。各洗浄時、ペレットを15~30℃で
20分間洗浄液でインキュベートし、2~8℃で5分間、7500gで遠心してください。
3回目の洗浄後はペレットにエタノール2mlを加え、ボルテックスした後、5~30℃で20分間インキ
ュベートしてください。インキュベート後、2~8℃で5分間、7500gで遠心してください1。
3. タンパク質の溶解
5~10分間ペレットを真空乾燥させます。1%SDS溶液を加え、ピペッティングして溶解してくださ
い。ペレットが完全に溶解しない場合は、サンプルを50℃でインキュベートしてください。不溶性画
分は2~8℃で10分間、10000gで遠心し沈殿させ、上清を新しいチューブに移してください。回収し
たサンプルはウエスタンブロット法に使用することができます。また、サンプルは-5~-20℃で保存
可能です。
タンパク質抽出の注意点:
1. 0.3M塩酸グアニジン/95%エタノール溶液あるいはエタノールに溶解したタンパク質ペレットは、2~
8℃で1ヶ月間、-5~-20℃で1年間は保存可能です。
2. より効率的にタンパク質を回収したい場合は、こちらのプロトコールをお試しください。2~8℃の
0.1%SDS溶液中で、フェノール、エタノール含有の上清を透析してください。透析のバッファーは3回
取り替えてください。10分間、10000gで遠心し、上清を回収してください。
3. SDS濃度が低濃度(0.1%以下)であれば、タンパク質はブラッドフォード法によって定量可能です。界
面活性剤による干渉を受けず、A260/A280値に依存しない測定方法を使用してください(微量のフェノー
ルは、タンパク質濃度の測定に影響する可能性があります)。
トラブルシューティングガイド:
RNAの分離
•1mgの組織または1×106個の培養細胞からの予想RNA収量
肝臓と脾臓、6-10 µg
腎臓、3-4 µg
骨格筋および脳、1-1.5 µg
胎盤、1-4 µg
上皮細胞(1×106個の培養細胞)、8-15 µg
線維芽細胞((1×106個の培養細胞)、5-7 µg
・収率が低い
サンプルが完全にホモジナイズされていない、もしくは溶解されていなかった。
抽出後、RNAペレットが完全に再溶解されていなかった。
・A260 /A280比が1.65以下
RNAサンプルを、TEバッファーではなく水で希釈した。低イオン強度およびpHが低い溶液は、280nm
での吸収率を増大させます(6、7)。
ホモジナイズに使用したしたTRIZOL®試薬1が少なすぎた。
ホモジナイズ後、サンプルを室温で5分間インキュベートしなかった。水相がフェノール相とコンタミネー
ションしてしまった。
抽出後、RNAペレットが完全に再溶解されていなかった。
・RNAの分解
動物より取り出された組織を直ちに処理または冷凍しなかった。サンプルまたは抽出されたRNAを-5
~-20℃で保存していた。サンプルは-60~-70℃で保存してください。
細胞の回収時、トリプシンを使用し回収した。バッファーまたはチューブがRNase freeではなかった。
アガロースゲル電気泳動に使用するホルムアルデヒドのpHが3.5 より低かった。
・DNAの混入
ホモジナイズに使用したしたTRIZOL®試薬1が少なすぎた。
サンプルが、有機溶媒(エタノール、DMSO等)、または強いアルカリ性溶液を含有していた。
• プロテオグリカンおよび多糖の混入
プロテオグリカンや多糖が混入してくる場合、RNA抽出プロトコールのステップ3を以下の様に変更し
てください。水相に0.25 mlのイソプロパノールを加え、さらに使用したTRIZOL®試薬1mlあたり、0.25
mlの高塩濃度溶液(0.8M クエン酸ナトリウム/1.2M塩化ナトリウム溶液)を加えてください。その後のス
テップは、プロトコールに従ってください。またRNA抽出時の遠心ステップの追加(1ページ、RNAの分
離方法、サンプルのホモジナイズ-オプション参照)と本プロトコールを組合せることにより、より高純度
のRNAを抽出することができます。
DNAの分離
•1mgの組織または1×106個の培養細胞からの予想DNA収量
肝臓および腎臓、3-4 µg
骨格筋、脳および胎盤 、2-3 µg
培養ヒト、ラットおよびマウス細胞(1 × 106個)、5-7 µg
線維芽細胞、5-7 µg
・収率が低い
サンプルが完全にホモジナイズされていない、もしくは溶解されていなかった。
抽出後、DNAペレットが完全に再溶解されていなかった。
・A260/280 比が1.70以下
DNAサンプルを、TEバッファーではなく水で希釈した。
フェノールが十分除去されていなかった。DNAペレットを0.1Mクエン酸ナトリウム/10%エタノール溶液
でもう1度洗浄してください。
DNAの分解
動物より取り出された組織を直ちに処理または冷凍しなかった。サンプル、または抽出されたDNAを-
5~-20℃で保存していた。サンプルは-60~-70℃で保存してください。
サンプルが、ポリトロンまたは他の高速度ホモジナイザーでホモジナイズされた。
RNAの混入
水相の除去が十分でなかった。
0.1Mクエン酸ナトリウム/10%エタノール溶液による洗浄が不十分だった。
・他のアプリケーション
PCR反応を行う前に、pHを8.4に調整してください。
制限酵素によるDNAの切断は、pHを調整し、1µgのDNAあたり3~5ユニットの酵素を用い、最適な条
件下で3~24時間反応させてください。通常、DNAの80-90%が消化されます。
タンパク質の分離
・収率が低い
サンプルが完全にホモジナイズされていない、もしくは溶解されていなかった。
抽出後、タンパク質ペレットが完全に再溶解されていなかった。
・タンパク質の分解
動物より取り出された組織を直ちに処理または冷凍しなかった。
・ SDS-PAGEにおけるバンドパターンの乱れ
タンパク質ペレットの洗浄が不十分だった。
References:
1. Chomczynski, P., and Sacchi, N. (1987) Anal. Biochem. 162, 156.
2. Chomczynski, P. (1993) Biotechniques 15, 532.
3. Ausubel, F.M., et.al, eds. (1990) Current Protocols in Molecular Biology, Vol.2, Greene
Publishing Assoc. and Wiley-Interscience, New York, p.A.1.5.
4. Simms, D., Cizdziel, P.E., Chomczynski, P. (1993) FOCUS® 15, 99.
5. Bracete, A.M., Fox, D.K., and Simms, D. (1998) FOCUS 20, 82).
6. Wilfinger, W., Mackey, K. and Chomczynski, P. (1997) BioTechniques 22, 474.
7. Fox, D.K. (1998) FOCUS 20, 37.
Teflon® is a registered trademark of E. I. Du Pont de Nemours & Co. TISSUMIZER® is a registered
trademark of Tekmar Co.
TRIZOL®® is a registered trademark of Molecular Research Center, Inc. *PCR is covered by a patent held
by Hoffman LaRoche Corporation.
Part 15596018.pps Rev. date: 12 Jun 2007