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熱膨張率を判断する際に、熱膨張率の異なる 2 種類の材質が一緒に固定されている
場合は、特に注意してください。例えば、ラック&ピニオン式フィードバックシステムの
熱膨張率は、ラックが固定された鋳鉄製レールのものに近くなる可能性が高くなりま
す。床取り付けのレールがついた大型ガントリー機の場合、コンクリート基盤の動き
を制限することでレールの膨張率を低減させることができます。また、最近のスケー
ルの多くは、複数の材質を使用しています。例えば、ガラススケールには、アルミスパ
ーが結合され、それがさらに鋳鉄部材に取り付けられているものがあります。この場
合、適切な係数を選ぶのは非常に困難です。スケールメーカーか、使用する機械のメ
ーカーにご相談ください。
物体センサーの配置
注意
熱が安定するよう、物体温度センサーは、計測開始の 25 分前に物体に固定してくだ
さい。
物体温度センサーを配置する際、まず最初に物体の膨張補正の主要目的を決めま
す。これは通常、次の 4 つの目的のいずれかになるはずです。
1. 機械が周囲温度 20°Cで作動するときに得られるであろう位置決め配置精度を推
定すること。機械の製作、承認、使用開始、再校正では、これが目的となることが多
く、ほとんどの場合、国内/国際的機械受入れ規格に規定されているものと同じで
す。
2. 国内/国際的機械受入れ規格に沿って校正を実行すること。
3. 機械のフィードバックシステムの温度が 20°Cの場合にフィードバックシステムが
達成できる位置決め精度を推定すること。これは、フィードバックシステムの障害
診断に役立ちます。
4. 機械で製造する部品を検査のために 20°Cに戻したときの、部品の精度を推定す
ること。これは、温度制御を行わない環境で精密非鉄部品を製造するのに、機械の
フィードバックとワークの膨張率が大幅に異なる場合に特に重要になります。
機械の位置フィードバックシステムが機械の作動中に高温となるか(例えばボールネ
ジなど)、例えばアルミのワークとガラススケールのリニアエンコーダなど、ワークの
膨張率が位置フィードバックシステムのものとは大きく異なる場合には、これらの目
的の差がたいてい大きな意味をもちます。
XC 補正ユニット付属の物体温度センサーには、テストする機械に固定するために強
力なマグネットが内蔵されています。物体温度センサーと計測する物体の熱接点が
良好であることを確認してください。
機械を 20°Cの環境で作動させた場合の精度の推定
機械を 20 °Cの環境で作動させた場合の精度を推定するには、物体温度センサーを
機械のテーブルか、もしくはモーター、ギアボックス、ベアリングハウジング、エキゾー
ストなどの熱源の近くにない、しっかりした機械の構造部分に取り付ける必要があり
ます。 物体膨張率には、フィードバックシステムのものを設定する必要があります。
国内/国際規格に沿った校正
国内/国際規格に沿って機械精度の計測を行うには、規格に規定された手順に従って
行う必要があります。これには、物体センサーを置く場所、使用する膨張率、実行する
機械のウォームアップサイクルなどが含まれます。熱ドリフトテストが規格で規定さ
れている場合、これも考慮する必要があります。
気温と機械温度が大幅に異なる場合、物体の表面と中心の温度がかなり違う可能性
があります。このような状況では、中心の温度を測れるよう注意して物体温度センサ
ーを配置してください。最大高 3 つまでの物体センサーを使用して複数のポイントで
温度を計測できますが、適用する補正係数は平均値となります。
物体センサーを常にボールネジかフィードバックシステムに配置しなければならな
いというのは、必ずしも正しい概念ではありません。次の例からもわかる通り、これに
は例外があります。