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同相分離
産業用通信リンクにおいて、同相ノイズやグランドループの排除は、頑強なリンク設計を行う際の重要な検討課題です。一般的なソリュ
ーションは、データソース(μP、UARTなど)とツイステッドペア線を駆動するトランシーバの間に、フォトカプラを使用して最大15mmのガ
ルバニック絶縁を設けることです。 これにより、同相ノイズが、感度の高いRx判定回路に入り、データ伝送エラーが生じることを防止で
きます。 カプラでは、内部でトランスミッタとレシーバが近接しているため、アイソレーションバリアによる浮遊容量を最小にする程度
の効果だけです。 しかし、絶縁材を使用すれば、同相ノイズ「スパイク」は入力から出力に通過できなくなります。ファイバ・リンクの手法
では、標準リンク長は数メートルなので、実際の有効なアイソレーションバリアは数メートルになります(ミリメートルではなく)。これによ
り、浮遊容量は効果的に減少し、同相ノイズの伝達経路がなくなります。
電磁干渉(EMI)耐性
EMIとは、電子放射を乱す、劣化させる、または干渉することで、電子および電気機器の性能を制限する電磁気障害のことです。
EMI問題に対処することは容易ではありません。電磁干渉の疑いがあるとき、問題を解決する最初のステップは、影響を受けた装置への
エネルギー伝搬メカニズム、すなわち放射、伝導または誘導かを見極めることです。誘導エネルギーの量を制限するか、接地または終端
技術の改善により根本原因を除去することによって、改善を行うことができます。また、物理的分離や遮蔽を使用して障害装置を保護する
こともできます。EMI問題を回避する最良の手法は、影響を受けにくい、または耐性のあるデバイスを使用する、結合効率を最小にするよ
うにレイアウトを最適化する、適切な遮蔽を使用する、などです。
産業用カッパ・リンクは、産業環境に広く存在するEMI放射から強く影響を受けます。このため、設計者は、ケーブルと隣接する電力線が
十分な物理距離になるように苦労することがあります。これに対して、光ファイバ・ケーブルは、EMIの影響をまったく受けません。光トラン
スミッタおよびレシーバは、過酷な産業環境を考慮して設計されており、そのような環境で最良であるか、場合によっては唯一の選択肢
になります。
特別なEMI耐性試験装置(図3)が、EMIにさらされたときのカッパ・ケーブルの感受性とPOFの耐性を実証します。POFトランスミッタおよ
びレシーバを介して50MBdのPRBS7信号を送信するTEMセルを使用し、増幅器で0~3GHzの周波数範囲を掃引しながらビット誤り率を
測定します。1メートルのシールデット・ツイステッドペア・ケーブルを使用して外部ループバック接続し、TEMセルを送りEMIにさらし
ます。ケーブルの向きによって、1.5GHz(同時にこれは携帯電話周波数スペクトルの範囲内にあります)を超える様々な周波数でビットエ
ラーが現れ始めます。
ビットエラーがなくなるまで各障害周波数で電界強度を減少させます。得られたグラフ(図4と図5)は、縦向きと横向きのツイステッドペ
ア・ケーブル・ループのそれぞれの結果を示します。最悪ケースの周波数では、シールデット・カッパ・ケーブルが取り付けられた状態で電
界を40V/mまで減少させなければなりませんでした。シールデット・ツイステッドペア・ケーブルに行なった試験から、予想通りこれらの
ケーブルが、ノイズの多い環境では使用できないことが分かります(図6)。
カッパ・ケーブルを取り外し、PCB面上で、直接ループバック接続した光ファイバ・トランスミッタおよびレシーバ装置をEMIにさらしたと
きは、ビットエラーがないことが分かります(図7)。この構成では、POFリンクは、0~3GHzの周波数範囲全体で150V/mを超える電界に耐
え ま し た 。
図3. EMI耐性の試験構成