Broadcom Safety Considerations When Using Optocouplers and Alternative Isolators for Providing Protection Against Electrical Hazards 仕様

タイプ
仕様
フォトカプラとその他の半導体アイソレータを
電気的障害に対する保護を目的に使用する
場合の安全性に対する考察
ホワイトペーパ
概要
フォトカプラやその他の技術を用いたアイソレータ
は、様々な機器において信号分離や電圧レベルシフ
トの目的で使用されています。また、これらの素子
は安全に関する絶縁を目的として使用されることも
あります。それら電気的な問題について検討する場
合、フォトカプラまたはその他のアイソレータの安
全に関する特性について理解しておくことが必要
です。
電気的安全の基礎
感電により人体を流れる電流が引き起こす電気ショ
ックは、瞬間的な痛み程度のものから心臓麻痺によ
る死までの生理的な影響を人体に与えます。人体に
危険を及ぼす電圧レベルは、健康状態、湿度レベ
ル、人体抵抗値などに依存し一定ではありません
が、一般的に安全とされる電圧レベルは、DC(直
流)電圧で42V以下、AC(交流)電圧で60V以下とさ
れています。人体がこれよりも高い電圧に曝される
可能性があるアプリケーションは、危険性を考慮し
十分な電気的絶縁が必要です。
安全係数の概念
人体に対する安全性を数値化して考える場合、シス
テム設計者は安全係数を考慮しなければなりませ
ん。安全係数の目的は、使用者の状態を考慮し、決
定論的ではありませんが、事故が起こる可能性を十
分に低くすることです。安全係数は、広範な工業技
術分野で使用されています。
例えば、土木工学において、ビル建設のスケーリン
グ支持材に用いられる安全係数は、通常2です。材料
の品質が良く知られたものでない場合は、より高い
係数が適用されます。
航空宇宙用途では、安全係数は通常1.25が用いられ
ます。これらのアプリケーションでは、重さによる
ハンディキャップが大きく、より高い品質管理と定
期的な点検サービスのコストは相当なものです。
そのため、この場合はより低い安全係数の使用が認
められます。安全のための電気的絶縁用途(強化絶
縁用途)では、安全係数として2が通常用いられてい
ます。
連続動作電圧
通常動作の間、フォトカプラまたはその他のアイソ
レータは、連続した電圧ストレスに曝され続けると
考えられます。この電圧は通常、使用電圧(working
voltage)と呼ばれます。
電圧ストレスが連続であるため、絶縁破壊を起こし
た場合に人体への高い危険リスクがあります。この
ため、フォトカプラやその他のアイソレータは、機
器の連続使用電圧の2倍以上の連続電圧絶縁能力を持
ったものを用います。
過渡電圧能力
連続した電圧ストレスに加え、フォトカプラやその
他のアイソレータは、高い過渡電圧を阻止し、それ
に耐えなければなりません。過渡電圧は、高エネル
ギ過渡電圧または低エネルギ過渡電圧のどちらかに
分類されます。(Table 1)
高エネルギ過渡電圧の方が、より危険なことは言う
までもありません。低エネルギ過渡電圧は、一般的
に人体に危害を及ぼすことはありませんが、絶縁物
に損傷を与える可能性があり、それが結果的に安全
性を低下させるリスクがあります。
2
Table 1. IEC60664-1 Impulse rating coordinates.
Nominal Voltage
Voltage
Rated Impulse Voltage
of the Supply System
Line to Neutral
V
V
a.c. or d.c
Three Single
V
Overvoltage Category
Phase Phase
I II III IV
50 330 500 800 1500
100 500 800 1500 2500
120-240
150 800 1500 2500 4000
230/400*
277/480*
300 1500 2500
4000
6000
400/690 600 2500 4000 6000 8000
1000 1000 4000 6000 8000 12000
低エネルギ過渡電圧
ESD(静電気放電)は、特によく知られた過渡電圧
で、このカテゴリに分類されます。ESDは容易に15kV
を超えるため、フォトカプラやその他のアイソレー
タの沿面距離や空間距離による絶縁電圧の許容範囲
を超える場合がしばしばあります。このため、フォ
トカプラやその他のアイソレータの入出力間で、フ
ラッシュオーバが起こります。しかしながら、この
フラッシュオーバでは深刻な危険には至りません。
高電圧ストレスが去った後は、フラッシュオーバは
自己完結し、絶縁のストレスは低減されます。その
後、再度フラッシュオーバが発生する過渡電圧レベ
ルは、まだ非常に高いところにあります。実際にフ
ラッシュオーバが始まる電圧は、標高、湿度などの
環境条件により大きく変わります。フォトカプラ
外のアイソレータは、比較的低いレベルのESDでも、
絶縁に深刻な損傷(進行性の損傷または、直ちに起
こる損傷)を受ける可能性があります。これに続
く結果として、連続使用電圧が安全とされる範囲
内に収まっていても、絶縁破壊に至る可能性があり
ます。
フォトカプラの場合、この破壊のシナリオは、
絶縁物の厚さを調整することにより回避されます。
特に、厚い絶縁材料を使用することにより、内部絶
縁耐圧が外部フラッシュオーバ発生電圧よりも十分
高いことを保証しています。しかし、そのような高
電圧保護は、動作と絶縁を非常に薄い絶縁に頼っ
ている他のアイソレーション技術では極めて困難
です。
これらのタイプの素子は、ESD破壊に対し特に脆弱で
す。フォトカプラ以外のアイソレータ技術には、次
の2つのタイプの構造があります。タイプ1は、スピ
ン・コーティングされたポリイミドを主絶縁に使用
しており、タイプ2は、シリコン酸化膜(SiO
2
)が主
な絶縁物です。
タイプ2のアイソレータの場合、SiO
2
絶縁は特にESD
による損傷を受け易い傾向があります。実際、集積
回路の設計者の多くは、SiO
2
構造へのESDによる損傷
を制限するための保護構造に、極めて長い内部配線
を設けています。
この保護には通常、電圧クランプ素子が用いられま
す。絶縁を目的とした素子の場合、絶縁バリアをま
たいで電圧クランプ素子を接続することは、極めて
現実的ではありません。このことは、タイプ2のアイ
ソレータが、必然的にESDによる損傷を受け易いこと
を表しています。
高エネルギ過渡電圧
高エネルギの過渡(サージ)電圧は、電力配電シス
テムでよく見られます。このような電力サージは、
同じ配電システムに接続された重機械の動作や、稀
に雷によっても引き起こされます。
そのような過渡電圧は、直接生命を脅かす可能性が
あるため、絶縁部品の構造と寸法を適切に選び、確
実な保護を行なうことが重要です。この問題につい
ては、機器レベルの安全規格の中で、絶縁カテゴリ
或いは、過電圧クラスとして規定されています。各
アプリケーションに対し対象となる機器の安全規
格は、それらの用途において絶縁が保たれるべき最
大の過渡電圧を規定しています。
部品に対する高電圧試験
連続的および過渡的電圧ストレスからの保護を目的
とするフォトカプラやその他のアイソレータの絶縁
能力に対する試験は、通常、構造的な要件と電気的
試験との組み合わせで行われます。
3
Figure 2. Optocoupler Double Insulation Construction
絶縁試験
この試験の主な目的は、絶縁部品が短い時間、通常1
分間、高電圧に耐えることのできる能力があること
を確認することです。
この試験を採用している安全規格の一例は、UL1577
です。合格・不合格は、漏れ電流を測定することに
より判定されます。これはまた、絶縁部品が組み込
まれた機器に対する絶縁試験に耐え得る能力を試験
していることにもなります。
しかし、この試験定格の適用は限定的です。特に定
格は、連続的な安全動作電圧を規定していません。
部分放電試験
部分放電試験は、一種の絶縁性能試験方法ですが、
高い過渡電圧に対する絶縁能力を試験するだけでな
く、通常動作電圧での絶縁性能の完全性も試験して
います。この試験では特に、絶縁物中の微小空洞(
マイクロボイド)の存在を調べます。電圧ストレス
下では、微小空洞内で発生するコロナ放電が絶縁能
力を低下させ、絶縁破壊を引き起こします。
この試験では、通常の動作電圧程度の試験電圧を印
加し、部分放電が発生しているか調べることによ
り、通常動作条件下での潜在的なの劣化の可能性を
調べることができるという利点があります。これに
より、安全な連続動作電圧を保証することが出来
ます。
この試験方法の2つめの利点は、低い試験電圧での試
験が可能なことです。機器の用途に近い電圧を用い
て試験することにより、試験電圧ストレスが絶縁性
能を低下させてしまう可能性を低くしています。部
分放電試験の究極の目的は、絶縁物の中が無空洞で
あることを保証することです。
しかしながら、「無空洞」ということは正しい言い
方ではありません。どんな絶縁物でも「100%空洞が
無い」ということはなく、試験の絶対分解能は、常
に測定システムにより制約を受けます。高精度の部
分放電試験は、分解能を1pCまで上げて行いますが、
量産出荷試験において安定的に試験可能な分解能
は、通常5pCまでです。
部分放電試験を用いてフォトカプラの高電圧に対す
る安全性を検査する規格の一例として、VDE0884があ
ります。この安全規格は、今日ではフォトカプラの
国際安全規格IEC60747-5-5に統合されています。
フォトカプラのパッケージは、光学的に透明な絶縁
物と、不透明なエポキシ外部モールドからなる複合
構造を持っています。
IEC60747-5-5の部分放電試験で試験している対象
が、外部モールドなのか、内部絶縁物なのかという
疑問が呈されることがしばしばあります。
広義には、両方ということになります。(Figure 2)
絶縁物内の微小空洞を検査する際、絶縁物に蓄えら
れた電荷を考慮に入れて、部分放電の合格基準値を
妥当なものにする必要があります。仮に電界が均一
であると考えられる場合、蓄えられた電荷は、絶縁
物を介して均一に分散されるため、部分放電測定
は、あらゆる絶縁構造に適用することが可能です。
標準的なフォトカプラの総パッケージ容量は、おお
むね0.7pF以下です。実際の電界は完全には均一で
はなく、絶縁構造内には部分的に僅かながら電荷の
不均衡が存在しますが、それでも部分放電試験の結
果は、外部モールドによる絶縁とフォトカプラ内部
の光学絶縁の両方に対して十分な有効性を持ってい
ます。
フォトカプラと似通った部分放電試験方法が、しば
しば磁気絶縁方式や容量絶縁方式のアイソレータに
適用されることがあります。この場合、それらの構
造内における電界の分布が、フォトカプラ構造に比
べてきわめて均一でないため、部分放電試験の有効
性は著しく限定的なものとなります。
一例として、100fFという小さな容量を持った微小な
容量式絶縁構造を用いたアイソレータがあったとし
ます。このような絶縁構造に1,000Vの試験電圧を印
加した時、蓄えられる電荷はおよそ100pCです。
この状況では、5pCという部分放電試験の合格基準
は、相当に緩いレベルとなります。もし5pCの放電
がそのような小さな絶縁構造内で実際に発生した場
合、すぐに雪崩降伏が発生する可能性が極めて高い
と考えられます。
部分放電試験は、フォトカプラ以外のアイソレータ
においても、外部モールド材料に内在する空洞欠陥
を検出するのには適しますが、それらのアイソレー
タにとって、ほぼ間違いなく最も高電圧に弱い部分
である、主要な絶縁構造中の微小空洞を検出するに
は適していません。
4
Figure 3. External package isolation distances
絶縁部品の電気的安全に関する構造要件
安全に関する構造的要件は、パッケージ内部構造に
関するものと、パッケージ外部寸法に関するものの2
つがあります。
1. パッケージ内部構造
Basic
insulation)や強化絶縁(Reinforced insulation)
といった、絶縁を行う目的を明確にする必要があり
ます。
• 基礎絶縁は、電圧レベルシフトなどのいわゆる機
能絶縁には有効ですが、感電からの保護には用い
ることが出来ません。
• 強化絶縁は、感電からの保護を目的とした絶縁が
必要な場合に用いられます。強化絶縁という言葉
はまた、2重絶縁(Double insulation)と言い換
えられる場合もあります。
ο 2重絶縁とは、文字通り定格電圧の2倍の絶縁能
力を有することです。2重絶縁の物理的な実現
方法もやはり文字通りで、例えば、各々所定の
絶縁能力を持った絶縁物を2層重ねた構造など
により実現します。強化絶縁はまた、1層の固
体(solid)絶縁物によっても実現可能です。
ο 単層の固体絶縁物による安全を目的とした絶縁
は、安全規格により要件が異なる場合がありま
す。例えば、機器レベルの規格であるIEC60950
では、厚さ0.4mm以上の単一の絶縁物は、強化
または2重絶縁構造として有効とされていま
す。固体絶縁物の定義に関しては、単に物質そ
のものだけでなく、物質の形成方法も関係しま
す。例えば、厚いポリイミド・フィルムは、固
体絶縁物として十分に有効ですが、液体ポリイ
ミドから形成されたポリイミド膜の場合は、そ
の限りではありません。
2. パッケージ外部寸法
パッケージの外部寸法もまた、安全に関する絶縁
の要件として重要です。この場合、外部空間距離
(clearance)と、外部沿面距離(creepage)の2つ
が大切です。(Figure 3)
外部空間距離(clearance)
外部空間距離は、入出力端子間の空間を介した最
短距離です。十分な空間距離を確保することによ
り、入出力端子間でのフラッシュオーバを防ぐこ
とができます。
実際にフラッシュオーバが発生する電圧は、高度
と湿度の影響を受けます。高度が高く湿度が低い
ほど、フラッシュオーバが起き易い傾向がありま
す。
フラッシュオーバを防ぐために必要とされる空間
距離は、IEC60664などの絶縁協調規格から参照す
ることが出来ます。この規格の中では、種々の動
作電圧毎の表が示されています。それらは、実験
により得られたデータと、フラッシュオーバに関
する理論の両方に基づいたものです。強化絶縁の
要件を満たすには、示された空間距離に安全係数2
を乗じた値を用います。
絶縁部品自体の構造のみならず、その部品が使用
された機器全体としての機械的な絶縁も考慮する
必要があります。特に、プリント基板上での半田
や配線により、絶縁距離が短くなる場合があるの
で注意が必要です。
外部沿面距離(creepage)
もう1つの重要な外部寸法が、外部沿面距離です。
これは、パッケージ表面に沿った入出力端子間の
最短距離です。この距離が重要とされる理由は、
入出力間の導電トラッキング経路が、絶縁物表面
を伝わって形成される場合があるからです。これ
に関係する要因は、湿気や埃などの外部汚染と、
絶縁物表面がそれらを引き寄せたり保持したりす
る性質です。外部沿面距離の要件は、機器の使用
環境、即ち汚染度(pollution degree)や、部品
material
category)により異なります。種々の使用環境に
対する外部沿面距離の要件は、IEC60664中の表に
示されています。
5
Figure 4. Typical Polymer Space Charge Degradation Characteristics
0
10
20
30
40
50
60
1 10 100 1000
Time to Fail
KV/mm HV Stress
絶縁寿命
フォトカプラやその他のアイソレータを使用した多
くの機器は、定期的な絶縁品質の検査が行われない
場合が多いため、絶縁能力は、使用者によるメンテ
ナンス無しにその機器の生涯に渡って安全を確保で
き得るものでなくてはなりません。
安全寿命の定義
何をもって安全とするかということは、しばしばメ
ーカの主観による場合があります。例えば、あるア
イソレータのメーカは、安全に使用することができ
る寿命を、定格電圧で連続的に動作し、1%の故障が
発生するまでの時間としています。この定義方法の
問題点は、1%の使用者が生命の危険に関するリスク
に直面する可能性があるということです。また、過
渡的な過電圧の影響や、安全係数についても考慮さ
れていません。
更に慎重で安全な考え方をするならば、次の何れか
が統計的に見て殆ど発生しない範囲を寿命の定義と
することです。
1. 電圧り絶性能下し永久
な絶縁破壊に至るポイント。
2. 絶縁性能が低下し、定格電圧の2倍の電圧を継続的
に絶縁する能力がなくなるポイント。
2通りの故障モードが考えられることから、寿命に対
しても各々個別にメカニズムを考えます。また、そ
れらは各々排他的な関係にあるわけではない事も考
慮する必要があります。
1. 過渡過電圧に対する寿命
過渡過電圧の定格は、UL1577の絶縁試験規格およ
び、IEC60747-5-5の過渡過電圧定格で各々規定さ
れています。しかし、それらには、機器レベルで
の予測寿命全体に渡る過渡電圧能力の詳細につい
て、直接触れていません。とりわけ、定格過渡電
圧での試験時間が非常に短い点が問題であると言
えます。
過渡過電圧は、コロナ劣化やその他のメカニズム
による絶縁劣化の原因となる可能性が高く、例え
短時間の過渡過電圧でもそれが繰り返されれば、
機器の寿命全体から見ると、絶縁の損傷が蓄積す
るので問題となります。機器が通常稼動している
時間内に受ける過渡過電圧の時間の和は、定格過
渡過電圧の試験時間を超えるであろうことは容易
に想像できます。
機器レベルでの寿命における安全な対過渡過電圧
能力を実現するには、絶縁構造を適切なものにす
ることも必要です。この絶縁能力を確かめるに
は、UL1577で行われるような高電圧試験を、更に
長時間延長して行う方法があります。
フォトカプラとその他のアイソレータのような異なった
技術を長時間の高電圧絶縁試験によって比較すると、多
くの性能の違いが見られます。例えば、フォトカプラ以
外のアイソレータは、UL1577絶縁試験において15分以内
の時間であれば、高電圧に耐えます。これに対しフォト
カプラは、UL1577絶縁試験において、100時間を超える
対高電圧能力を見せます。この性能の大きな違いは、機
器レベルの対過渡電圧寿命に対し、直接的な影響を与
えることは明らかです。
2. 通常動作電圧に対する寿命
寿命を決定するもう1つのメカニズムは、定格負荷
で連続した動作電圧が印加されている間に起こり
ます。
主な懸念は、経時的劣化を伴うような明確な磨耗
故障メカニズムがなく、製品の想定動作寿命の範
囲内で絶縁故障を起こす場合です。
絶縁物内部に微小空洞があることにより、部分放
電が発生して絶縁劣化を起こすことがないように
することが大切です。その他の考慮すべき経時劣
化メカニズムもあります。高電圧ストレスに曝さ
れたポリマ絶縁材料の場合、重要な経時劣化メカ
ニズムは、空間電荷劣化です。(Figure 4)
空間電荷は、高電圧が印加された絶縁物中に注入
される電荷です。注入された空間電荷は、内部電
界を変化させ、絶縁物へのストレスを増加させま
す。注入される空間電荷の量は、主に絶縁物の厚
さと印加された電界により決定され、kV/mmのスト
レス・ファクタとなります。その他の有意な要因
として、動作温度、波形タイプや周波数などがあ
ります。
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AV02-2015JP - July 7, 2009
ポリマ材料の空間電荷による経時劣化は、現在で
も盛んに研究されているテーマです。しかしなが
ら、この劣化現象は未だ解明されたとは言い難い
状況にあります。空間電荷による劣化に関し、寿
命を予測するために有用ないくつかの明確で安定
的に観測される特性があります。絶縁寿命を試験
した結果を印加した電圧に対してプロットする
と、低kV/mmストレス領域での経時劣化の様子は、
明らかな漸近線となります。
このことは、あるレベル以下の印加電圧では、予
測寿命が急激に長くなることを意味しています。
このレベル以下の電圧ストレスでは、空間電荷に
よる影響は問題とならない程度まで低減されるか
らです。
フォトカプラの場合、使用されている絶縁物が厚
く、kV/mm電圧ストレス・レベルが低くなるため、
空間電荷による絶縁劣化は必ずしも問題とはなり
ません。
空間電荷による絶縁劣化は、薄いポリマ・コーテ
ィングを用いたアイソレータでは深刻な問題とな
ります。この場合、高kV/mmストレスが空間電荷に
よる絶縁劣化を引き起こす元となります。高印加
電圧での絶縁寿命試験でこの現象を見ることがで
きますが、それよりも通常動作電圧に近い電圧で
の長時間試験が問題となり、機器レベルの通常の
動作寿命時間以内にも関わらず、絶縁故障が見ら
れることがあります。
結論
フォトカプラは、電気的安全に関する広範な用途に
おいて、長年に渡り使用されて来ました。それにも
関わらず、機器レベルと部品に関する安全規格が、
絶対的な安全使用を保証する要件を明確にしていな
い場合、しばしば議論の対象となります。
議論は、主に高電圧印加時の絶縁寿命と、高過渡電
圧による絶縁の損傷についてです。しかしながら、
これらはフォトカプラ本来の構造により既に対処さ
れているため、机上の懸念に過ぎないことが、実験
と現象論の両方から証明されています。一方、フォ
トカプラ以外の半導体アイソレーション技術におい
ては、この机上のリスクは、現実的な安全上の危険
要因となり得ます。
多くの場合、機器レベルの安全規格は、その定義に
おいてフォトカプラ以外の半導体絶縁技術を、強化
絶縁に使用することを構造面から禁じています。
しかし、すべてがそうではありません。旧来の機器
レベルの規格において、フォトカプラ以外の半導体
絶縁技術に関するリスクは、不明瞭に規定されてい
るか、或いは全く示されていません。この状況は、
フォトカプラの安全規格を用いることが技術的に有
効でないにも関わらず、フォトカプラ以外の半導体
アイソレータの安全性を評価するためにしばしば適
用されるという、一層現実離れした状況を作り出し
ています。
参考文献
1) A Space-charge Life model for ac electrical Aging of
Polymers. G. Mazzanti, G.C. Montanari, L.A. Dissado. IEEE
transactions on Dielectrics and Electrical Insulation.
2) Contribution of Partial Discharges to Electrical
Breakdown of Solid Insulating Materials, C. Mayoux
and C. Laurent. IEEE transactions on Dielectrics and
Electrical Insulation.
3) IEC60950-1 Second Edition 2005, Information
Technology Equipment Safety.
4) IEC60664-1 Insulation coordination for equipment
within low-voltage systems.
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